頼もしい援軍
「もう一歩避けろ、コトブキ!」
徹の指示に従いもう一歩移動する。道路の壁を蹴って反対側の壁へと移動する。
「見えるのか、徹」
僕は目をぱちくりとさせながら言う。
「一人で異界に篭っているうちに殺気の感じ方みたいなのを理解した気がしている」
流石は勇者のホルダー。人間種最高のカードホルダーだ。
「その感じ方からすると、デモンの見えない攻撃は三本の爪だ。二本増えている上に範囲も広い」
「前より大げさに避ければいいってことか」
「賢しいな、人間」
デモンは唇の端を持ち上げると、鉈を徹に振り下ろした。
徹は光剣でそれを受け止める。
僕は槍を回収すると、放った。
「一投閃華金剛突!」
光の槍がデモンの背中に当たり、突き刺さる。
けれども、足りない。
この硬さだと皮を破れた程度だろう。
なら、掘るように続ければいい。
槍を一旦消し、手元で再構築する。
「一投閃華金剛突!」
槍は正確無比に同じ場所に突き刺さり、前よりも奥へと進んだ。
「ぬぐう!」
デモンが苦悶の声を上げ振り返る。
その片手は徹を相手にしたままだ。
「お前の相手はこっちだよ!」
そう言って徹は鉈を弾くと、デモンの胸を斬った。
浅くだが、傷ができた。
後はニムゲの時と同じだ。
硬い皮がなくなれば、その箇所に一投閃華金剛突を当てればいい。
勝てる。
そう確信した時のことだった。
けたたましいパトカーのサイレンの音が近付いてきた。
パトカーは道の中央を走り、そのまま真っ直ぐにデモンに体当たりを敢行した。
デモンはそれを受け止め、数歩後退る。
――キィン
パトカーが四つに切断される。
そして、中から二人の人間が飛び出した。
師匠とコースケだ。
「悪い、遅れた!」
師匠が言う。
「パワード!」
鬼のホルダー、コースケが金棒をデモンの頭部に叩きつける。
デモンの外面にダメージは見えないが、苦悶に顔を歪めて腕を地面に叩きつけた。
コースケはその行動を既にデモンの顔を蹴って回避している。
「まんまと狙いは果たされたってわけだ」
師匠は悔しげに言う。
「けどあんたには想定外がある。地上に進出した直後にこの四人組と会ったことだ」
そう、僕の知りうる限り最高の戦力がここにある。
それは、四天王クラスの敵にも通用すると僕を奮い立たせていた。
続く




