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ぶつかりあう光剣

「気をつけろ。カードホールドを装備してる。別物だ」


 そう言うと、僕は一歩を踏み出した。

 周囲の景色が後ろに走っていき、その瞬間に僕の体は犯人の側面にあった。

 それを、犯人は数秒遅れて目で追う。


 遅い。その時には既に僕の体は相手の斜め後方にある。


「ホーリークロス!」


 徹の範囲攻撃。

 光の剣で切った十字から光線が犯人に発射される。


 ――キィン


 鉄と鉄がぶつかりあうような音がした。

 その瞬間、ホーリークロスはなにかに飲み込まれたように消滅した。


 しかし、それを把握していたかのように徹は駆け出している。

 光の剣と光の剣がぶつかりあった。


 僕は犯人の背後を取り、突進する。

 犯人の背後に複数の針が生まれ、それが一斉掃射された。


「ゼロ・ストーム!」


 槍を高速回転させ全てを弾きながら近づく。

 そして、目にも留まらぬ速さで犯人の背後を取った。


 ――キィン


 警戒して僕も徹も後退する。

 しかし、これで僕らは犯人の前後を取った。


「不可視の攻撃。これほど厄介だなんてな」


 徹がぼやくように言う。


「これを生け捕りなんて無理だと思うぜ、コトブキ」


 なにも言わなくてもわかっていたのだろう。

 犯人を殺したくなどないと。


 僕は人を殺したことがない。相手がどんな悪人であろうと戦闘不能状態に陥らせるにとどまってきた。

 一線を超えてしまった時、自分が変わってしまう気がする。

 それが、怖い。


 しかし、そうも言っていられないのが現状か。


「徹。もう一度懐に入り込めるか?」


「お前がそこからちょっとどいてくれればまたホーリークロスが打てる。そこからだ」


「わかった」


 僕は犯人の斜め後方に移動する。

 再び、徹のホーリークロスが放たれた。


 ――キィン


 音が鳴る。ホーリークロスが消滅する。犯人と徹の光剣がぶつかり合う。ホタルのような光が飛び交う幻想的な光景。

 それを、射抜く。


「一投閃華金剛突!」


 力を篭めて槍を投じる。それは光となって一瞬で犯人の両腕を貫いた。


 ――キィン


 徹が後退する。僕も横方向へと移動し、徹の傍へと戻る。


「やったか……?」


 犯人はしばらくだらりと垂れた腕に必死に力を込めようとしていたが、持ち上げられないらしい。

 その瞳が、底のない闇のような瞳が、僕らを射抜いた。


 ――キィン


 音が鳴った。

 僕も徹も回避行動を取る。


 次の瞬間、犯人の頭から首が落ちていた。


「自殺? そんな愁傷な奴だったのか?」


 徹が戸惑うように言う。


「いいや。狙い通りだよ」


 空から声が響いた。


「六ケ所でカードホルダーは生贄に捧げられた。悪魔召喚の儀式が始まる」


 大地が揺れ始めた。

 瓦が震え、擦れ合う音が聞こえる。


 そして、それが消えた時。犯人の遺体から抜け出る影があった。

 影は四メートル程の大きさにまで膨れ上がり、人のような形を取った。


 手には鉈。体は紫色に変わっていく。

 間違いない。四天王だ。


「我が名はデモン。四天王が一角なり」


 吠えるように言うと、デモンは片手を翳した。


 ――キィン


 また、音が鳴った。

 遺体は物言わぬままそこで倒れている。




続く

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