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その音が鳴った時

 僕らは両断されて崩れ落ちる車の内部から脱出した。

 犯人は僕らの前で無感情に光の剣を持っている。


 光の剣からはホタルのように光が舞い、夜空の中を飛んでいる。


 ――キィン


 鉄と鉄をぶつかり合わせたような澄んだ音がした。

 身の危険を感じて跳躍する。


 背後の電信柱が真っ二つになって崩れ落ちた。

 殺されていた。

 背筋が寒くなる。


 それと同時に、英治がどうやって殺されたかを知り、泣きたいような気持ちになった。


「異界、展開!」


 エリカが叫ぶ。

 一瞬で周囲がお菓子で作られた大部屋に変わる。

 エリカはアークス。

 異界の扱いには長けているのだろう。


「ここなら遠慮無く戦えるわね、ユニコーンのホルダー!」


「ありがとう!」


 言って、天井を蹴って目にも留まらぬ速さで敵に接近する。


 ――キィン


 槍を前に出し不可視の一撃を弾こうとする。

 そのまま、吹き飛ばされた。


「アクセルフォー!」


 そう唱えて恵が前方へと駆け出した。


 ――キィン


 恵は跳躍し、一撃を回避する。

 そして、敵の懐についに辿り着いた。


「パワードツー!」


 恵の拳が唸りを上げる。

 その一撃は剣であっさりと断たれた。


 恵の腕が飛んでいく。

 それを恵はキャッチすると、後方へと一時撤退した。

 そのまま、ヒールでの回復に移る。


「強すぎる……」


 エリカが慄くように言う。


「不可視の一撃と通常攻撃。両立する同時行動に対応しきれないわ」


 ――キィン


「いでよ、ブラウンモンスター!」


 そう言って、エリカは高々と手を掲げる。

 チョコレートのホールケーキの形をした巨大な化物が部屋に出現した。


 そのまま、エリカを乗せて佇む。

 不可視の一撃は柔らかいスポンジ部分を斬ったが、そんなものブラウンモンスターには些細な傷でしかない。


「ブラウンモンスターが伸し掛かって動きを止める。トドメは貴方が刺して、ユニコーンのホルダー!」


 そう言うと同時に、ブラウンモンスターは跳躍して敵に伸し掛かった。

 敵はそれを眺めても無表情に、ただひとつ剣を振った。


 ――キィン


 踏み潰される直前。

 敵は、姿そのものをこの世界から消していた。


「私のコントロールを無視して私の異界から出た? 常人が?」


 エリカが戸惑うように言う。

 そう、犯人は消えていた。

 最初からいなかったかのように。



続く

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