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コトブキ、やきもきする

 二月も十日になった。

 そろそろタイムリミットも近い。

 しかし、優子達が狙っているドロップアイテムは一向に出ない。

 どうしたものかと空に視線をやる。


 薄く澄んだ青空が、優子の気持ちも知らずに綺麗に広がっていた。


「なあ、そろそろ教えてくれないか。女子だけでなにやってるかを」


 コトブキは少し膨れた様子で言う。

 朝の登校路だ。


「秘密は秘密です。ね、優子さん」


「恵ちゃんの言うとおり」


「なにか危険なことをしてるんじゃないだろうな?」


 コトブキはじとっとした目でこちらを見る。


「歌世先生がいるから大丈夫よ」


「あの人はあの人で結構無茶させるからなあ」


 コトブキは半信半疑といった様子だ。


「もうしばらくしたら話すわよ。私達がなにをしていたか」


「本当なんだろうな?」


「ええ、もちろん本当よ」


 そう言って、優子は胸を張って皆の数歩前を歩き始めた。

 今は、追求の時間を少しでも減らしたかった。



++++



「コトブキ君、あれ結構限界だな」


 美味しい異界で歌世は呟くように言った。

 最前線では、蹴鞠が六枚の翼から放たれるアイアンファントムで敵を蹴散らしている。


「そろそろ出るモンスターも出尽くした感じですね」


 恵がケーキを頬張りながら残念そうに言う。


「けど、私達は下層のモンスターをまだ見ていない」


 蹴鞠が言う。


「ちょ、ちょっと。勝算はあるんですか?」


「上層で闘ってみた感じ、ここのモンスターはあまり強くない。下層のモンスターもそんなに強くないと想像がつく」


「憶測じゃないですか」


「けど、いいの? 優子ちゃん。目的の物を得られずにその日を迎えたとしても」


 優子は考え込む。

 最近やきもきしているコトブキ。

 彼を満足させるにはなにか成果が必要だ。

 そして、その成果はきっと上層にはない。


「下層……行きます?」


「駄目ならケツマクって帰んべ」


 歌世が適当に言う。


「下層へのワープゲートならマッピング済みだ。進路を言うから蹴鞠ちゃんはそれに従ってね」


「了解です、先生!」


 そう言って、蹴鞠は鼻息も荒く先頭を歩き始めた。


(本当に大丈夫なのかなあ……)


 そうは思うが、皆の意見を翻させるような名案がないのも事実だった。

 残された時間は数日。滞在時間にして二時間以下。

 下層にしか頼る手はなかった。



続く

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