否定してくれ
昼休みになると、僕は屋上に出た。
普段は施錠されているはずの扉は簡単に僕を迎え入れた。
あぐらをかいて弁当を食べている生徒が一人。
先輩だ。
「コトブキ君。誘ったのにまったく来なかったから寂しかったぞ先輩は」
そう言って、にししというオノマトペが似合いそうな表情で先輩は微笑む。
「今日は話に来ました」
「話?」
「先輩、その前に先輩のカードホールド、見せてもらっていいですか」
先輩の目つきが鋭くなった。
「なんでだい?」
「番長の昏睡の件。先輩が関係してるんじゃないかという疑惑が湧いています。僕に任せてくれれば全部解決しますので」
「嫌だと言ったら?」
「先輩……?」
「ああ、いつもこうだ。私ばっかり嫌な目にあう。なんでこんな星の下に生まれてしまったんだろう」
先輩は今にも泣き出しそうな声で言う。
情緒不安定の一言だ。尋常な精神状態ではない。
「君を、殺さなければならないだなんて」
先輩の背中に翼が生え、羽が一斉掃射された。
ユニコーンのカードをホールドに挿すには遅すぎた。
「プロテクション!」
高々と唱える声がする。
六角形を連ねたような透明なバリアが僕を覆って羽をはじいた。
「徹!」
「庭に行かないからついて来てて正解だったな」
徹はそう言って足取りも軽く僕の隣に並んだ。
「先輩は今尋常な精神状態じゃない。できれば、傷つけずにカードだけを破壊したい」
「難しい注文を言ってくれるな。まあ、傷つけずにっていうのがコトブキらしいけど」
「僕が速度で引っ掻き回す。徹はプロテクションで自衛しつつ真正面から行ってくれ」
「了解」
二人揃えば、怖いものなんてない。
先輩が正気を失っていようとも、問題ではない。
そう思えた。
続く




