魔界のヒーロー
果たして、一行は最後の部屋の前に辿り着いた。
性格の悪さが滲み出るような異界だった。
罠に次ぐ罠。
しかし、それを乗り越えてきたことで、皆の意識は変わった気がする。
異界は危険な場所だ。それをあらためて認識できたのだ。
だからこそわかる。
ボスの放つ圧倒的な気配が。
師匠が何かを言いかけて、皆を押し倒した。
すると、それまで扉だった場所は黒い球体によって消滅してしまった。
「まったく、最後の最後まで……」
師匠は物憂げに言って立ち上がる。
全員、それに習う。
扉の奥にいたのは、大きな悪魔。腕と太腿は分厚く、丸太ほどありそうだ。胸筋は今にも張り裂けんばかりで、身長は四メートル近くあるだろう。
「罠にはもう慣れた、とでも言いたげだな」
巨大な悪魔はせせら笑うように言う。
「薄々感じていたけれど、ここは悪魔の異界なのね」
師匠が悪魔を睨みつけながら言う。
「ご名答。俺は悪魔王四天王が一人、ニムゲ。この異界と共に様々な人間を屠ってきた」
まあ、と悪魔は言葉を続ける。
「気に入った奴は仲間にしてやってもかまわんがなあ」
「戯言を」
言ったのは徹だ。
「何故より弱い方に付かなくてはならない。馬鹿げているにも程がある話だ」
「弱い方、だと……?」
「ああ、はっきり言ってやる。お前は俺達よりも弱い」
「おいおい、あんまり挑発するなよ」
僕は慌てて間に入る。
「どの道倒す敵だ。かまわんだろう」
「徹君の言うとおりよ。コトブキ君、自信を持ちなさい」
そう言うと、師匠は槍を手に取り出した。
各々、武器を手に取る。
「ここまで愚かだとはな。四天王の実力、思い知らせてやる」
「その前に一つ」
ニムゲは師匠の言葉に肩透かしを喰らった表情になる。
「悪魔王とは、一体何?」
「俺を倒せたら教えてやろう」
そう言って息を吸い込むと、ニムゲは凍りつく息を吐いた。
続く




