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オークキング戦

 優子による治療も終わり、二人は意識を取り戻した。


「やっぱり歌世ちゃんは凄いね。アクセルテンまでなら完全に使いこなしてる」


 コースケは微笑みながら言う。


「嫌味か」


 師匠はバツが悪い表情で言う。


「悪いけど、自爆するほどなら意地の張り合いはやめてもらえるかの。迷惑じゃ」


 番長が申し訳なさげに言う。


「わかったよ」


「もうこんな醜態は晒さないと誓うわ」


 二人はその言葉を守り、その後の戦いでは大人しく援護に回った。

 下層のワープゲートが見えてくる。

 二人の見張りが待機していた。


「おお、あんた達か。最近そこらのボスを退治してくれてるMTってのは」


 もう噂になっているようだ。

 僕は少し照れくさく感じながらも師匠から預かった書類を提出する。


 見張りは頷くと、書類を僕に返した。


「気をつけろよ。ここのボスは十五人の探索員が怪我をして撤退を余儀なくされた怪力の持ち主だ」


「下層のマッピングは済んでるの?」


 師匠が問う。


「ああ、地図ならここに。宝石類はもう残ってないと思うな」


「そう」


 そう言って、師匠は差し出された地図を受け取る。


「南方面がまだ探索されてないわね」


「そっちを探索する前にボスと当たった。まずはボスを、と皆して集まったんだがな」


「それじゃあ、南方面のマップを埋めつつ最後にボスと戦うわ」


「わかった。ご武運を」


 師匠が番長に視線を送る。

 番長は頷いて、ワープゲートの中に入っていった。


 三分待って、皆中に入る。

 異界は、夜だった。


「笹丸、ライト」


 番長が言う。

 笹丸は荷台からライトを人数分出し、皆に渡した。


「暗闇かあ。月明かりが多少あるとはいえ、ちょっと不安要素かな」


 コースケが珍しく弱音を吐く。


「不意打ちには注意して。足音をよく聞きながら行きましょう。予定は変更ね。ボスに直行する」


 その一言で、僕は緊張した。

 暗闇の中でのボスとの対決。しかも相手はプロの探索員十五人を追い返したという。

 中々にハードルの高い対戦だ。


「番長君。これマップ。ボスの場所に一直線に進んで」


「了解じゃ。進むぞ」


 そう言って番長は歩き始める。

 その後に、僕らは続いた。


 道中、肌の色の違うオークが多数出たが、アクセルテンを使う師匠とコースケに即殺された。


「俺の出番がないな」


 緑が呆れたように言う。

 二人共純粋に強い。それも、速い。

 敵がまるで雑魚であると錯覚しそうだ。


 しかし、相手は生徒会長のパーティーを壊滅寸前まで追い詰めた強力な敵なのだ。

 そのうち、石造りの門が見えてきた。


「ここがボスの間じゃ」


 番長はそう言って立ち止まる。


「マップに注意書きがあるのう。ボスには護衛がついていて六体のハイ・オークが際限なく湧いてくると」


「ハイ・オーク?」


 笹丸が戸惑うように言う。


「多分色違いのオークだろ。便宜上そう名付けたんじゃないか」


 緑が冷静な分析をする。


「そうでしょうね。ってことは、ボスを相手にする人間と雑魚を相手にする人間が必要ってわけだ」


「私は雑魚相手に回りますよ」


 先輩が集団の中では珍しく発言する。


「私のアイアンファントムは基本雑魚相手じゃないとそこまで効かない」


「俺も雑魚相手かな」


 と緑。


「いいでしょう。私、コースケ、コトブキでボスを退治しましょう。今回はサクッと終わらせるわよ」


 師匠は頷いて言う。

 暗闇の戦いに師匠も多少不安を覚えているのかもしれない。


「それじゃ、行くわよ」


 そう言って、師匠は先頭を歩き始めた。

 中では、焚き火が炊かれていた。

 赤い光が周囲を照らしている。


 その中で、一際巨大なオークがゆっくりと視線を上げた。

 そして、咆哮する。

 オークキングだ。


 身が竦む思いだった。

 そして、オークキングは、手に持った巨大な鉈をひとふるいした。


「神の闘気!」


 白い闘気を纏って防御力を上げた番長を、オークキングの鉈が捉える。


「ぬおお」


 踏ん張った番長だったが、樹に吹き飛ばされた。

 恵が優子の前に立つ。


「優子さん、護衛は私がしますから、支援よろしく」


「了解」


 その後、六体のハイ・オークが駆け寄ってきて、一気に混戦となった。

 再び鉈が振るわれる。


「パワード!」


 コースケが唱え、鉈を金棒で受け止める。

 火花が散り、鉄と鉄がぶつかりあう鈍い音がした。


「アクセル!」


 師匠が叫び、高々と跳躍する。

 そして、オークキングの額に向かって突進した。


 しかし、取り巻きのハイ・オークがそれを察知して斧を投げる。


「アクセル、スリー!」


 師匠はその全てを叩き落とすと、オークキングの頭を蹴って一時上空へと避難した。


「コトブキ!」


 ここまでお膳立てされたらわかっている。

 投擲できる斧はもうない。


 オークキングの額は無防備だ。

 槍を持って跳躍する。


「投華螺旋突き!」


 僕の一撃が、オークキングの額に吸い込まれた。

 悲しげな悲鳴が上がる。

 オークキングは額を抑えてのたうち回ると、一歩、二歩と後退し、そして倒れて物言わぬ遺体となった。


「なんとか凌げたのう」


 番長が安堵した、とばかりに言う。

 いつの間にか、恵、優子、笹丸、先輩は優子の唱えるサンクチュアリの結界の中にいる。

 ハイ・オーク達は最初からいなかったかのように消えてしまった。


 僕の手に空中からアイテムが落ちてくる。

 新品のカードホールドと、王冠と、白紙のカード。


 王冠には様々な宝石がはめ込まれており、高値で売れそうだ。


「また金が貯まるのう」


 番長はほくほく顔だ。

 そんな中、緑だけは疑うようにコースケを見ていた。

 なにかあったのだろうか。


 忍者のホルダーの緑。

 彼がなにを考えているか、僕には予想がつかなかった。


「今回の戦いでわかったの。コースケは必要戦力じゃ」


「それじゃ、僕の入部認めてくれるの?」


「もちろんじゃわい。俺がなにも言わせん」


「やったあ!」


 コースケは子供のように飛び跳ねて喜んだ。


「ちょっといいかコトブキ」


 緑がそう言って僕に近づいてくる。


「二人で話がしたい」


 緑は珍しく真剣な表情で、そう言った。



続く


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