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来訪者

 時間は流れるように過ぎた。

 秋は去り、冬の寒さが周囲を満たし始める。


「今年のクリスマスイブは土曜日だね」


 二人きりの帰り道、優子が言う。

 そういえばそうだった気もする。


「どっか行くか」


「うん、映画でも見に行こうよ」


「じゃあショッピングモールだな」


「約束だよ」


「ああ、約束だ」


 脇役の僕がクリスマスにデート。不思議なこともあるものだと思う。

 その巡り合わせに感謝したい。


 それが、十二月の月初めのことだった。


「今日は高河原の異界に行こうと思う」


 放課後、部室で師匠が宣言する。

 番長が顔をしかめた。


「またボス討伐かのう」


「んだよ。いい経験になるだろう。なに、フェニックスより強い敵は出ないさ」


「下層の見張りに、何か書類を見せとったよな」


 番長は疑うように言う。


「お前さん、何者じゃ?」


「ただの教師だよ」


 師匠は飄々とした調子で言う。

 番長は疑わしげに師匠を見つめていたが、そのうち諦めたのか溜息を吐いた。


「まあ、そう言い張る以上それ以上の情報は掴めんじゃろうのう」


 その日の戦いは師匠がアクセルフォーまでを開放して援護に回ったおかげで潤滑に進んだ。

 そして、その翌日のことだった。


「静かにー」


 朝のホームルームの時間、師匠が手を叩きながら教室に入ってくる。


「今日は転校生を紹介するぞ」


「また転校生ですか?」


 力也が戸惑うように言う。


「ああ、転校生だ。別に仲良くしなくていいぞ」


「そりゃないんじゃないですか、先生」


 そう言って、にこやかに微笑んだ少年が部屋に入ってくる。

 いかにも爽やかといった感じの少年だ。


「私としては拒否したいぐらいだけどね」


 師匠がどこか歯痒そうに見えるのは気のせいだろうか。


「転校生の田代コースケ君だ。今日から皆の仲間になる。コースケ君は異界の経験が豊富だから君達の助けになることもあるだろう」


「ということでコースケです、皆よろしく」


 女子が色めきだった。

 笹丸と緑は面白くなさ気に頬杖をついている。

 恵は顔面蒼白だ。

 なにかが変だった。


 背筋が寒くなるような感覚を覚える。

 まるで、殺意を向けられているかのような。


 師匠がゆっくりとこちらに近づいてきて、耳打ちした。


「奴はアークスだ」


 その言葉に、僕は絶句した。

 師匠の敵対団体の一員ではないか。

 それは、奇妙な共同生活の始まりを告げる鐘だった。



続く

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