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魔王と聖獣

「僕は自分の中のお前を否定しようとし続けてきた。忌まわしいものだと。禍々しいものだと」


 僕は独白する。もう一人の自分、魔王に向けて。

 自分が魔の存在であるとわかった時、嫌悪感が強かった。

 父の息子だとわかった時の安堵感は忘れられない。


 しかし、自分には魔の因子があった。

 それは優子との子供を作る妨げにもなるという。


 自分の中で、魔物の子供である自分というのは忌まわしい事実でしかなかった。


「そんな僕の意識が、お前を作り出していたんだな……」


「やめろ……」


 魔王が、怯えるように言う。

 しかし、僕は怯まず言った。


「僕は受け入れる。魔族である自分を」


 それは覚悟のある決断だった。

 魔である自分を受け入れる。

 自分の中の汚れを受け入れる。

 中々できないことだ。


 誰だって、鏡に写った自分が醜かったら気分が沈む。

 しかし、それを受け入れなければ前に進めない。


「やめろおおお!」


 魔王が駆け出してくる。

 その体が粒子となり、溶けていき、僕の中に吸い込まれていった。

 曇天が消えていく。


 そして、世界は晴天に包まれた。

 そこで、世界は閉じた。


 そして、周囲は大魔王の城の一室に戻る。


「勇者も天使も地に伏した。残ったのはこの大魔王だ! この世界の運命は決まった!」


 大魔王が吠えている。


「まだだ!」


 僕は叫んだ。

 頭から角が生えて冠が砕け散る。


「まだここに、聖獣がいる!」


 大魔王は目を見開いて僕を見た。


「コトブキ……!」


 徹にヒールをかけている優子が思わず微笑み、涙を零す。

 そして、僕と大魔王は対峙した。



続く

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