魔王との対面
「ご苦労だったね、シュマン。下がっていいよ」
通された部屋でそう言ったのは、僕らとそう変わらぬ歳の美青年だった。
しかし、なんだろうこの圧迫感は。
対面しているだけで胃の中のものが逆流しそうな。
ジエンドを超える威圧感が、彼が魔王なのだと警笛のように知らせていた。
美青年は座って本を読んでいる。
それを閉じると、僕らに向かって歩み寄った。
「会いたかった、コトガヤ」
「会いたかった……?」
僕はオウム返しする。
それほど、その一言は僕にとっては意外だった。
僕は魔王を倒すことを目的にしている。
暗殺者との対面を心待ちにする心境は理解できない。
「うんうん、その眼差し、母親に似ているね」
そう言って、魔王はにこやかに微笑む。
そして、魔王は両手を掲げた。
「全ては、君と、君の母親と会うためにやっていたことだ。人間界侵攻作戦も、異界の生成も。元の目的は違った。けど、今は違う。そして、ようやく今それは叶った」
魔王は、頭に被っていた冠を外す。
どうしてだろう。
僕は頭がぼんやりするのを感じていた。
まるで、夢の中にいるかのような。
そして、魔王に向かって、一歩、二歩と歩み寄っていた。
魔王は屈託のない笑顔を見せる。
「コトブキ?」
徹が戸惑うような声を上げるが、僕の歩みは止まらない。
まるで、夢遊病者のようだ。
そして、ついに魔王の傍で頭を垂れた。
「さあ、始めようか。戴冠式を。君を魔王に任命して、僕は大魔王とでも名乗ろうとしよう」
続く




