異界展開
「異界展開はアークスの一級秘匿だぜ? そう簡単に教えるとでも?」
そう、気だるげにコースケは言う。
「けど、師匠には教えた」
「歌世ちゃんは喋ったのか。存外お喋りだな。けど、それも僕らの長い付き合いがあってだ」
そう言って、コースケは背もたれにもたれ、伸びをする。
「何故、異界展開を求める? そこから話してもらわないと話にならないな」
僕は躊躇った。
魔王の御子。僕の本性。それを知る者は極僅かだ。
しかし、コースケがそれを言いふらすタイプにも見えなかった。
僕は、コースケを信じることにした。
僕は語る。
ジエンドとの決戦。四天王の全滅。魔界への行き方の必要性。魔王の御子の僕なら魔界に繋がる異界を作れる可能性があること。
コースケは目を細め、全てを聞き終えた。
「そうか。僕が捕らえられているうちに、自体はそんなとこにまで進展していたか」
コースケは呆れたように言う。
「魔界に行くためには異界展開の習得が必須だ。僕は君に縋るしかない」
「歌世ちゃんに聞けばいいじゃないか」
「師匠は死んだよ」
コースケは押し黙った。
「なにか、知ってはいけない秘密を知ってしまったらしい。アークスに暗殺された」
「なら。僕がアークスに義理立てする義理もないかな」
コースケはそう言って、上体を前に向ける。
「教えようじゃないか。異界展開の方法を」
そう言ったコースケの表情は、珍しく真剣そのものだった。
続く




