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思わぬ姉弟子

 フィフスクラスの任命式はなんと僕の母校が舞台に選ばれた。

 なんとも、痕跡を残すことは危険に繋がるということで普段と変わりない場所で行われるのが通例なのだそうだ。

 それならスーツもいらないのではないかと思うのだが、そうもいかないらしい。


 大人の世界の建前というのも難しいものだ。

 着慣れぬスーツに身を包み、若干の居心地の悪さを感じながら、生徒会室で待っていると、彼女はやってきた。


 それは、本当に社会人なのかと問いたくなるようなずぼらな女性だった。

 長い髪の毛はぼさぼさで、服はよれよれ。微笑み顔には警戒心らしきものはなく、にへらというオトマノペが似合いそうだ。


「貴方が琴谷君ですね。会いたかった」


 そう、彼女は言う。


「どうも、琴谷です。この度は過度な待遇を受けまして」


「あー、そういう堅苦しいのはなし、なし」


 そう言って、ひらひらと手を振る。


「私も歌世さんの教え子なんですよ。弟子同士仲良くしましょー」


「師匠の……?」


「はいっ」


 元気良く言う。


「貴方に印や記念品を渡すことはできません。これは貴方の身を守るためです。しかし、貴方はフィフスクラスとして登録された。その権限は今後必ず行使できるようになります。では、今日は簡略的ですがこんなところでお開きとしましょうか」


 簡略的にもほどがある。

 これではスーツを用意した甲斐がない。


「貴女が、これから師匠の代わりに教師として赴任するんですか……?」


 恐る恐る訊く。

 得たり、と彼女は微笑んだ。


「はい。六階道烈。セカンドクラス。貴女の顧問としてこれからびしばしやってくんでよろしくお願いしますね~」


 眼鏡がそう言うと同時にずり落ちた。

 慌ててそれを治す。

 なんだか頼りない人だな。

 それが姉弟子の第一印象だった。



続く

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