フィフスクラス
「今回のジエンド討伐の功績を正当に評価されてコトブキ君のフィフスクラスへの昇格が決定しました」
恵に起き抜けにそんなことを言われたので、僕は戸惑うしかない。
「恵さん、日本語で頼む」
「ナンバーㇲに入団した時に説明を聞かなかったんですか?」
呆れたように恵は言う。
「ナンバースは数字毎に位が設定されています。上に行けば行くほど権力を行使できる。今回のコトブキ君の四段階昇進はかつて例がない栄誉なことなんですよ」
「ほー……」
回転しない頭でぼんやりと考える。
「それって敵に狙われる確率が高くなるってことじゃね?」
「大丈夫でしょう。あんな化け物を相手に大立ち回りする人なんですもん」
お手上げだ、とばかりに恵は言う。
恵は、前回の戦いで公園の傍まで来ていた。
しかし、ジエンドの威圧感に気圧されて駆けつけられずにいたらしい。
その気持ちは、僕もわかる。
僕達もジエンドに初めて遭遇した時は戦闘を諦めて逃げ出したのだから。
「フィフスクラスってどれぐらい偉いんだ……?」
今ひとつ、ピンとこない。
「歌世さんですらサードクラスだったと言えば、わかりやすいですかねえ」
師匠の二段階上。それは破格だ。
「私のお給料貸すんで、スーツの準備、しておいてくださいね」
「スーツぐらい俺の貯金で」
「初任給、まだ出てないでしょう?」
黙り込む。
「冬馬も、その、フィフスクラスとやらに昇格したのか?」
「冬馬君はナンバースの正式なメンバーではありません。なので、昇格はありませんね。残念なことに」
あれだけ上昇志向が高い男にしてはヘマをしたものである。
しかし、師匠より上の地位。
ピンとこない話である。
「それに、来るらしいですよ」
「来る?」
「歌世先生の代任となる女性です」
その一言で、僕は一気に目が覚めた。
「その人は、どんな人なんだ? クラスは?」
「詳しいことは自分で確認を。私はファーストクラス。ペーペーなんで情報が入ってこないんです」
そう言って肩を竦めると、恵は去っていってしまった。
別れがあれば、出会いもある。
新たな教師との出会いが、僕を待っているようだった。
続く




