決着、そして……
「フェニックスのホルダーだと、何故、前回出てこなかった?」
ジエンドが戸惑うように言う。
師匠は不敵に微笑む。
「人間界も色々ごたついてるってことさ。さ、コトブキ君」
師匠の手が、僕の肩を離れる。
「決めちゃいなさい」
僕は頷く。
僕は槍を掲げる。
四体の分身も同様に。
その全ての槍は光を宿した。
師匠が球を投げる。
退魔の球。
禁断の異界で老人から譲られたあの球だ、
それは割れて、清浄な空気が周囲に漂い始めた。
とたんに、ジエンドは金縛りにあったように動きを止める。
「一閃投華――!」
槍を引く。
「金剛突!」
五つの流星がジエンドを襲う。
「馬鹿な、馬鹿な……!」
必死に動こうとしつつも身動きできない。ジエンドはそんな様子だった。
五つの流星のうち三本が、ジエンドの肉体を貫いた。
そのうち一本は、脳天を貫いていた。
ジエンドが倒れる。
「優子、サンクチュアリを!」
師匠が鋭く指示する。
優子は頷いて、サンクチュアリを唱えた。
ジエンドの遺体がサンクチュアリの結界に包まれる。
ジエンドの遺体はカードに変わり、散り散りに飛び散ろうとしていたが、結界に阻まれた。
それを、一枚、一枚、師匠は焼いていく。
その最後の一枚を、冬馬がかっさらうように取った。
「ジエンド討伐の証拠だ。一枚もらってくぜ」
「そのカードは強い誘惑を持つ。それに負けるようなことがあれば……」
師匠はためらうように言う。
冬馬は軽い調子で言った。
「このカードを上納すれば将来安泰だぜ。それに勝る誘惑なんてなかなかないぜ」
師匠はしばらく難しい顔をして考え込んでいたが、そのうち苦笑した。
「俗物だなあ、君は」
「どうも」
冬馬は気を悪くした様子もなく軽い調子で言った。
僕と師匠は向かい合う。
「師匠。生きていてくれて嬉しいです。けど、どうして死んだふりなんてしていたんですか?」
「そうだね。君にはそこから説明しなければならないだろうね……」
そう言って、師匠は遠くを見るような表情になった。
続く




