防戦にて攻戦
わかったことがある。
ジエンドの鉄壁の結界を破るには彼の意表を突くスピードが必須だ。
そしてこの中でスピードスターといえば僕だけ。
僕が、なんとかするしかない。
僕は槍を地面に突き立てる。
そして、その瞬間に四体の分身を周囲に呼び出した。
ジエンドの顔から笑みが消える。
四体の分身はユニコーンの速度にアクセルフォーのバフをかけた状態で彼の周囲を駆け回り始めた。
二体の攻撃が結界に弾かれる。
しかし、二本の槍がジエンドの肉体を貫いた。
僕は地面に槍を突き立てたまま、それをじっと睨んでいる。
後ろには優子がいる。
最悪、僕が犠牲になっても優子だけは。
そんな思いがある。
「やるじゃんか、ユニコーンのホルダー!」
分身に紛れて接近していた冬馬が、コートに巻き付いた蛇を一斉にジエンドに襲いかからせる。
それらは見事に、ジエンドの右腕を抉った。
同時に、回復を終えた徹も攻撃に加わる。
ジエンドの右腕が完全に断たれて宙を舞った。
それを、信じられないとばかりにジエンドは眺める。
そして、ジエンドの顔から正気が消えた。
「うおおおおおおおお」
ジエンドは雄叫びを上げて駆け始める。
最悪の選択をしやがった。
そう、心の中で舌打ちする。
こうなると、ジエンドの力を止める腕力は僕にはない。
槍を構えて、腰を落とす。
自分一人で避けることはできる。
だが、優子を連れて逃げる隙は、既にない。
後は、禁断の異界で鍛えた筋力がいかにジエンドに通用するかだ。
そして、ジエンドの爪が、僕に振り下ろされた。
「少しばかりの後遺症は覚悟してくださいよ、琴谷様!」
「コトブキ!」
「コトブキィ!」
徹と優子が口々に叫ぶ。
その声には絶望が滲んでいる。
「不死領域」
その声は、染み入るように公園に響いた。
ジエンドの爪は、僕の体を通過して、そのまま地面を抉った。
僕の体は炎のようになり、全ての攻撃を受け付けないようだった。
そしてそれは、僕の肩に手を置く女性のもたらした効果のようだった。
その女性は、もちろん。
「待たせたね、コトブキ君」
「師匠……!」
死んだと思われていた歌世が、そこには立っていた。
続く




