ジエンド対最強戦力
「ジエンドオオオオオオオ!」
冬馬が叫んで駆け出す。
そのコートに絡みつく蛇が一斉にジエンドに向かって襲いかかる。
しかし、無駄。
ジエンドのバリアはそれを無効化した。
「危ない!」
僕は言って、跳躍して冬馬を抱きかかえた。
さっきまで冬馬がいた位置にジエンドの腕が通過する。僕がいなければ冬馬のコートに爪が突き立てられていたことだろう。
後から思ったことだが、玄武のホルダーの冬馬ならばそれもガードできたかもしれないが。
休む暇も与えず徹が畳み掛ける。
「一閃!」
空間をも断つ居合い切り。それを冬馬の接近の影に紛れて近づいて放つ。
しかし、ガードされる。
「二閃!」
二回目の居合い切り。それも弾かれる。
もう無理だ、徹。退け。そんな僕の思いも無視して、徹は更に放った。
「三閃!」
ジエンドの結界にヒビが入る音がした。
いけるか。
仲間全員がそう思って心を浮き立たせただろう。
それが、隙となった。
徹は腹を貫かれ、吹き飛ばされた。
優子が慌てて駆け寄り、ヒールを唱える。
「そういえば、琴谷様の現世への未練は貴女でしたな、レディ」
ジエンドはそう言って、醜悪な笑みを浮かべて立ち上がる。
「現世への未練を断ち切れば、魔王の御子という自分の運命を受け入れる気にもなりますかな」
「ジエンド……!」
僕はジエンドの前に降り立っていた。
分身も何も使っていない。
いくら禁断の異界で鍛えたとはいえ、その行為はあまりにも無謀であった。
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恵は公園から感じる圧迫感に息を呑んでいた。
「これが……ジエンド」
ジエンドが現界してから数分。
突入するべきだ。
そう思いながらも、その場にいる三人は身が竦んで動けずにいる。
最初に動いたのは、緑だった。
「俺は、行くぜ」
緑は言う。
「けどよお、緑」
笹丸が躊躇いがちに言う。
「なんだよ、笹丸」
「足手まといにしかならねえよ」
緑は悔しげに歯噛みする。
「それでも、俺は……」
「その気持ちだけで、十分だよ、緑君」
そう言って、彼女は緑の肩を叩いた。
現れたその人物の姿に、三人は一様に目を丸くした。
「後は、私に任せておいて」
そう言って、彼女は深夜の公園に歩いていった。
続く




