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試練

「今日の夜の十時、いつもの公園で、コトブキ君の入団試験が行われるそうです」


 戸惑うような表情で、恵は言った。


「公園ってことは、戦闘系の試験なのかな?」


「そこまでは……」


 恵も戸惑っているのだろう。なにせ、戦闘して勝てば入団だなんてこちらに有利すぎる条件だ。


「わかった、ありがとう」


 そう言って、僕は部屋に戻ることにした。

 その服の裾を、恵が引いた。


「恵さん……?」


「私、これ以上周りから人がいなくなるの、嫌ですよ」


 涙声だった。

 師匠が死んだことでナーバスになっているのだろう。

 だから僕は、恵の肩に手をおいて、力強く言った。


「約束だ、恵さん。僕はいなくならない」


「約束ですよ!」


 縋るように言う。

 僕は微笑んで答えた。


「ああ、約束だ」


 時間まではあっという間に過ぎた。

 あっという間過ぎて、生徒会主催のスイカ割りの約束を忘れてしまっていたほどだ。

 それは後日開催ということでケリが付いた。


 問題は、その時まで僕が生きているかだが。

 戦闘試験というのがなんともきな臭い。

 ナンバースは魔物の子供である僕をこの機会に処分しようとしているのではないか。

 そんな懸念が、ある。


 まあ、疑っていても仕方がない。

 僕は時計を確認すると、こっそりと家を出た。

 夜の風は生ぬるい。

 そんな中、公園に向かって歩く。


 今でも、この道の先には師匠が待っているのではないかと思う時がある。

 ただの感傷だ。

 しかし、その感傷が現実になればどれほど素晴らしいかと思う。


 公園について待ち受けていた人間に、僕は目を丸くした。


「剣也さん、でしたっけ」


 師匠の師匠。

 剣也が、気だるげにコーヒーを飲んでいた。



続く

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