閃光のように
「アクセル・フォー!」
僕の唱えたスペルで徹の速度が途中から加速度的に変わる。
その速度は風よりも上だ。
しかしジエンドは、巨大な片手で刀ごと徹を捕まえようとゆったりと動いた。
その自信。自分は勝てるだろうという絶対的な自分への信頼が敗因になった。
ジエンドの体から、何本もの蛇が生えた。
それは血を浴び、鮮血を吐く華のように見えた。
「お前の完全防御は完全すぎた。集中している方向の攻撃だけを無効化するだけのスキルだと、まあ察しはついたよ」
淡々とした口調で言うのは、冬馬だ。
「まあ、俺も同じペテンを使ってるからだけどね」
「貴様あああああああ」
「甘い!」
徹が居合を放つ。
後方に意識をやっていたジエンドは一瞬反応が遅れた。
しかし、なんとか空間の断裂をかき消す。
徹はさらに、そこに追撃を放った。
「居合二の太刀、二閃」
居合とは本来一刀でおしまい。
居合使いは抜けば数段腕が下がるなどと言われるのもそのため。
その居合の連撃を、徹は可能とした。
「一投閃華、金剛突!」
僕の槍が光となって相手の脳天めがけて飛び立つ。
それは、徹の居合とほぼ同時に相手の体に届こうとしていた。
(どうする、ジエンド)
秒にも満たない僅かな時間で僕は考える。
金剛突を防げば胴を居合で斬り飛ばされる。二閃を防げば槍が脳天を射抜く。
どうする、どうする。
そう思ったときには、ジエンドの姿はその場かいなくなっていた。
「っち、逃げたか」
徹が忌々しげに言う。
「おい……やばいぞ」
そう言ったのは冬馬だ。
会場からはざわめきが聞こえてくる。
「魔王の子供……?」
「悪魔の子供と言ったか? あいつは?」
疑念と嫌悪の視線が自分に集まっていることは、僕も薄々察し始めていた。
続く




