玄武
四本の流星が冬馬の腹部めがけて降り注いでいく。
そして、僕もその箇所を狙ってアクセルで強化した足で地面を蹴った。
「五光突!」
冬馬は動かない。
肉まで槍が達した感触はある。
しかし、貫通はしていない。
ぽたり、ぽたりと血が槍から滴り落ちている。
「あぶ」
ない、までは言い切れなかった。
僕は後方へと飛ぶ。
乱れ動く蛇の動きに巻き込まれ、四体の分身はばらばらになって消えていった。
殺すつもりだった。
その事実に、僕は衝撃を受けた。
「随分とキレやすいみたいじゃないか、冬馬」
「五月蝿い。ちょっとやそっとのことなら事故で済ますと言われている」
「それは、どういう……」
唖然として僕が口を開いたときのことだった。
「そうです、それこそがニンゲンなのです、琴谷様」
空間がねじれる。
それはさっき、玄武とユニコーンの防御と攻撃がぶつかった場所。
「ならば、貴方はそんなものを守ることはない」
そう言って、その場に現れたのは、二メートルもあろうかという美丈夫だった。
懐かしい圧迫感に、僕は息を呑む。
「ジエンド……」
「そう。魔王軍が四天王が一人、ジエンド。お見知りおきを」
そう言って、ジエンドは優雅に会釈した。
続く




