強き者
「試合が始まったら」
潮風斬鉄をかつぎ徹は口を開く。
場所は闘技場。
相手は同年代の青年。
「降参してはもらえないだろうか」
相手は驚いたような表情になった後、憤怒の表情を見せた。
「それは俺を侮っているのか」
「いや。ここまで勝ち残っているチームでしかも副将。弱いわけがない。しかし」
そこで、徹は苦笑する。
「そのレベルでは痛い目を見るだけだ」
「どちらが痛い目を見るか見せてやろうではないか」
「はじめ!」
審判がはらはらした様子で言う。
「アームド!」
相手はスペルを唱える。
途端に周囲の物質が相手の鎧のパーツとなり飛んでいく。
ゴーレムのホルダー。
かつてコトブキが苦戦したホルダー。
「この鉄壁の防御を崩すことは何者にもできん!」
「そうかな」
そう言うと、徹は担いでいた潮風斬鉄を構えた。
居合の構え。
ゴーレムの拳が振り下ろされる。
それが、一瞬で切断された。
居合だ。
しかも、目にも止まらぬ速さの。
いつ抜いたのかも、いつ鞘に戻したのかも、一般人には見えないだろう。
相手の動きが止まった。
「次はこれを本体に叩き込む」
徹は淡々とした口調で言う。
「もう一度言う。降参してはもらえんか」
しばし、相手は沈黙した。
自尊心や様々なものが葛藤をうんでいるのだろう。
だが、結論までそれほど時間はかからなかった。
「降参だ」
ゴーレムの鎧が剥がれ落ちていく。
徹はそれを見届けることもなく、試合場を後にした。
勇者のホルダー徹。
その強さは、日増しに有名になっていくのだった。
続く




