表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

217/274

気持ちを一つに

 四回戦第二試合。

 闘技場に立つのは純子。

 ここまで勝ち星なし。


 いくら自分が製造科の生徒とは言え、実戦戦闘でここまで差が開くとは思わなかった。


(最低限の体術もカリキュラムにはあるんだけどなあ……)


 拗ねるように思う。

 相手は挨拶もせずにカードホールドにカードを挿す。

 その全身に鱗が生え、全身が筋肉で肥大する。


「古代種のホルダー……」


 唖然としながら純子は言う。

 鉄の刃をも通さぬ鉄壁の鱗。純子の天敵だ。


「はじめ!」


 審判が言い、相手はゆっくりと前進を始める。

 それと同時に、純子は周囲に剣を出現させる。

 剣生成スキル。


 それが製造科に配属された純子の得意スキル。

 それを、順序よく投擲した。


 しかし、駄目だ。

 鉄の鱗は全ての刃を弾く。


 再び、剣を出現させる。

 さっきまで八本だったのが、六本。

 その代わり、一本純子の手に両手で持たれたものが増えた。


 それすらも駄目で、次は四本。

 それも駄目で、ついに二本。

 そして、零本。


 相手の進軍が止まった。

 純子を射程圏内に捉えたのだ。


「あきらめたか」


 滑稽そうに相手が言う。


「あなたの敗因を教えてあげる」


 純子は淡々とした口調で言う。


「なに?」


 相手は戸惑うように言うしかない。


「私に溜める余裕を与えたことよ!」


 そう言って、純子は手に持っていた剣を一閃した。

 それは竜の鱗を深々と斬って、相手に大ダメージを与えた。


「なっ」


「その動きはダメージを受けた経験も少ないようね、古代種のホルダーさん!」


 連撃。

 さらに相手の腕が断たれ、足に深い一撃が叩き込まれる。


「この剣は私の思い。一途な思い。それを具現化したもの。そんな鱗なんかで安々と止められるものではない!」


「まいった! まいった!」


 相手が喚くように言い、興奮状態だった純子は我に返って剣を持つ手を抑える。

 剣から手が離れない。

 全身が震えている。


 人を傷つけるってこんなに怖いことだったんだ。

 緊張状態が抜けて、そんな実感が遅れてやってくる。


 ゆっくりと、剣から指を剥がそうとする。

 しかし、上手くいかない。

 そこに、手伝う手が合わさった。


 温かいその手は、コトブキの手だった。


「よく頑張ってくれた、純子。これで、後は俺達次第だ」


「信じてます。極みの三人ですもんね」


「よせよ。徹がいればなんとかなる」


 本当、この人は飛び抜けて強いのに飛び抜けて自信がないのだ。

 この人にはきっと届かないだろうなと思う。さっきの言葉の真意も。

 けど、それでいいと思う。

 好きだ好きだと面白がっていってる後輩。その程度に思われてあしらわれている程度で、満足しつつある自分に純子は気が付き始めていた。



続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ