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動く城
盾と盾がぶつかりあって、鈍い金属音と衝撃が会場に響き渡る。
二人の聖騎士は闘技場の中央で盾で押し合っていた。
(できる)
はじめは相手の腕力や技量からそうと測る。
それらは自分とさほど差はなく、それを補助するための開幕チャージ(高速攻撃)を放ったからだ。
均衡状態が訪れた。
互いに冷や汗が流れている。
盾を引いた瞬間、剣戟による戦いになるだろう。
自分は勝てるのだろうか。
この戦いで、今まで自分に一回も勝ち星はない。一年生だからだなんて言い訳にならない。
「はじめえぇぇぇぇ!」
純子の声が聞こえて、いつの間にかオーバーヒートしかかっていた頭が冷静に回転を始める。
「殴っちゃえ!」
「そうでした」
そう言って、相手の金的を膝で蹴り上げる。
そう、卑怯だのなんだの思わなければ、この程度のことはできるのだ。
相手の腕を一本断って、首元に剣を突きつける。
相手はため息を吐いた。
「大した一年坊だよ。降参だ」
仲間達から喝采の声がする。
ようやく自分も戦力になれた。
満足してはじめは戻っていく。
続く




