圧倒
「はじめには悪いけど」
闘技場で向かい合う十人。
五対五の団体戦。
僕は宣言していた。
「この戦いは僕一人で終わらせる」
徹が口笛を吹く。
「天変地異の前触れか? あの自信のないコトブキが完勝宣言なんて」
僕は苦笑交じりに返事する。
「倒さなければならない相手が増えた。これぐらいできなければ僕にその資格はないと思う」
「言ってくれるじゃないか」
相手は苛立ちを隠さずに言う。
「五対一ってわけか?」
「ああ」
「五人相手に一人で勝つと?」
「ああ、そうだ」
優子はハラハラした表情でこちらを見ている。
「なら、見せてもらおうじゃないか」
「ああ、見せてやる」
ユニコーンのカードをカードホールドに挿す。
その途端に全身に白い薄い体毛が生え、頭に角が生えた。
その角に振れた途端に、槍に変化する。
黒い外套が体を覆い、魔物の気配が周囲を支配した。
「ユニコーンの……ホルダー!」
相手の五人に緊迫の表情が走る。
「はじめ!」
審判が試合の開始を宣言する。
その途端に僕は軽く地面を蹴っていた。
それだけで一人目の懐に入る。
腕力も随分上がった。
これならやれる。
顎を槍の尻で撃ち抜く。
脳震盪を起こし、まず一人脱落。
また軽く地面をける。
上空に向かって飛び上がる。
「五月雨・改!」
降り注ぐ光の槍が三人の足と腕を射抜いた。
そして着地と同時に最後の一人の喉元に槍を突きつける。
「ば、化け物……」
「降参してくれると僕としては助かる」
相手は息を呑んだ。
「降参、降参だぁ!」
「すげえ……」
はじめが感嘆の声を上げる。
待ち受けるは玄武のホルダー。
その前哨戦で苦戦するわけにはいかないのだ。
続く




