極みの三人 コトブキ
ついに大将戦がやってきた。
徹は闘技場の中央で向かい合う二人の大将を眺める。
コトブキに緊張はないようだ。それに少し安堵する。
気が小さいのが彼の悪いところだ。
「まあ十中八九勝ちだろうな」
徹は潮風斬鉄をかつぎながら淡々とした口調で言う。
「なんとかこぎつけたわね」
優子も苦笑交じりに言う。
その表情にはコトブキへの信頼が滲み出ている。
「我らが信頼する大将殿の出陣だ。ゆったりと見守ろうじゃないか」
徹の言葉に、優子は頷く。
そして、コトブキはカードホールドにユニコーンのカードを挿した。
その頭部に角が生え、全身に薄い白い体毛が生える。
そして同時に、黒いコートが彼の身を包んだ。
その途端に、魔物の濃厚な匂いが会場内に漂い始めて、徹は眉をひそめた。
(なんだ、あのコート)
そう、まるでジエンドの威圧感を覚えた時のような圧迫感がある。
相手の大将もそれは同じようで、一気に表情が青ざめた。
「コトブキの勝ちだ」
徹は疑念を隠しながら、淡々とした口調で言う。
「はじめ!」
審判が言った次の瞬間にはコトブキの槍が相手大将の腹部を貫いていた。
極みの三人。
その中でもスピードに特化したコトブキ。
その進軍を止める者はいない。
「なんとか一回戦突破だねえ」
優子が微笑んで言う。
彼女はなにも感じないのだろうか。
徹は感じていた。
コトブキと自分は相容れない者になってしまったのだと。
コトブキが帰ってくる。
徹は、表情が強張っていたことを自覚し、微笑む。
「勝ったな、コトブキ」
コトブキは苦笑してカードホールドからカードを抜く。
コートが消えて、圧迫感が消える。
「なんとかかんとかって感じかな。下級生達も頑張ってくれたよ」
そう言って、コトブキは苦笑する。
徹は手を差し出す。
コトブキはそれを握る。
(いつか、コトブキと俺は戦うことになるんだろうか……)
そんな不吉な予感を覚えた徹だった。
「二回戦は団体戦です。次の試合が始まるまで休憩室に移ってください」
進行役の言葉に従い、各々休憩室へと向かった。
一回戦。終わってみれば圧勝だった。
続く




