はじめの戦い
はじめは自分が強い戦士だと思っている。
コトブキにも徹にもその点は認められているし、MTとしての成績も優秀だ。
しかし、上には上がいるということか。
校別対抗戦一回戦第一試合。
先方として出たはじめは窮地に陥っていた。
チャージをして突進したと思ったら、相手が視界から消えて背後に現れた。
気配を察して躱したつもりだったが、剣で足を貫かれた。
機動力は半減。
そこから、盾で相手の攻撃を凌ぐ防戦一方の試合になっている。
(負けるものかよ……)
はじめは歯ぎしりしたいような気持ちで思う。
徹ならまだしも、こんな無名の戦士に負ける程に自分が劣っているとは思いたくない。
反撃の一撃を繰り出す。
相手は後方に跳躍してそれを躱した。
「専門学校じゃ結構鳴らしたんだろうな」
相手は淡々として口調で言う。
はじめはこれがチーム戦ならば、と思う。
チーム戦ならば、自分は試合を決定づけるピースとして機能できただろうに。
「しかしMT大学の専門講座は指揮官育成の講座だ。その内容はMT専門学校のものより深化している」
(負けて、たまるか……!)
「チャージ!」
最後の力を振り絞り、はじめは唱える。
はじめの体は光となり、相手に突進する。
「カウンター」
相手は淡々と唱えた。
次の瞬間、はじめは胴体を貫かれていた。
「そこまで!」
審判が言い、治療員がはじめの治療を開始する。
大会の初戦はまさかの黒星。
暗雲が立ち込めてきた。
はじめは治療を終え、とぼとぼと帰る。
そして、純子の試合の観戦をはじめた。
「残念だったな、はじめ」
徹が潮風斬鉄をかつぎ、優しい口調で言う。
「奇術師のホルダー。まんまとやられました」
はじめの口から出てきた言葉は、自分で思っていたより沈んでいた。
「徹さん」
「なんだ?」
「相手はMT大学の専門講座は専門学校のものより深化していると言っていた。僕が専門学校に通っている時間は無駄だったんでしょうか」
徹は目をパチクリとさせる。
そして、滑稽そうに笑った。
「経験を活かすも殺すもお前次第だ。俺はMTの大学にMTの専門学校が劣っているとは思わんよ。今日もお前は一つ経験を積んだ」
「今日も?」
「負けの経験だ」
はじめは黙り込む。
「今後の試合で、活かすも、殺すも、お前次第だ」
はじめは決意する。
このままじゃ終わらない。
けして終わらない。
自分はこのチームの勝利のピースになるのだと。
続く




