異界の主
その後も道中は危なげなく進んだ。
何度か行き止まりにも辿り着いたが、そこはマッピングしながら歩いているので他の道を選んでみるだけだ。
そして、僕らはそのうち、開けた公園のような場所に出た。
石畳の道が途切れて、草原に繋がる。
草木に風が吹く。
ここが異界だなんて信じられない程の広さだった。
人が一人、立っていた。
老人が剣を杖のようについて、こちらを見ている。
「アークス…‥ではなさそうだな、悪名高きユニコーンのホルダーよ」
「悪名……?」
僕は戸惑いながらそう言った老人に問う。
「ユニコーンのホルダーが何人もアークスのメンバーを捕らえたと聞く。それは悪名というものよ」
「その口ぶり、会った時から思ってたけどアークスの一員だね」
師匠の言葉に老人は沈黙する。
「失念していた。アークスのメンバーは異界を作れる。これも人造異界だったというわけだ」
師匠は返事を待つように暫し黙り込む。
しかし、そのうち口を開いた。
「異界を閉じては貰えぬだろうか」
師匠の言葉に、しばし老人は考え込む。
しかし、そのうち笑いだした。
「はっはっは、一番にここに来るのがアークスではなくナンバースだとは。アークスも鈍ったものよ」
そう言って、老人は杖のようについていた剣の切っ先を引き抜いた。
そして、こちらを指した。
「試してみるか。お主らが受け取る者達なのかと」
そう言った次の瞬間、老人は空間の断裂を放っていた。
僕はパーティーの前に立つ。
どうせ上位存在の異界だろうからと試していなかったけれど、もしかしたらできるかもしれない。
空間の断裂が消滅するように、こちらからも空間の断裂を作ってかき消す。
見事に相殺された。
老人は目を丸くする。
異界を作ることはまだできないが、空間の断裂を作るコツは既に知っている。
後は相手を倒すだけだ。
僕は槍を構えた。
相手も、剣を構えた。
続く




