途切れる繋がり
蹴鞠は葬式の翌日には、登校していた。
普段通りに生活するのが一番良いと判断したのだ。
そしてそれは事実だった。
授業という作業はすり減った心を誤魔化すには最適だった。
そして、昼休みになる。
なんとなく、蹴鞠は屋上に出た。
使が、フェンスの外を眺めていた。
「や」
短く挨拶する。
「蹴鞠さん、でしたっけ。何か?」
使は振り返ることもなく言う。
「あんただったら知ってるかもしれないって思って聞きたいんだけど、笑われるかもしれないとも思う」
蹴鞠は、迷いつつも言う。
使は、戸惑うように振り返った。
「人って、死んだらどうなるんだ?」
「人は、死ねばそこまでです」
使の断言に、蹴鞠は殴られたような衝撃を受けた。
「魂というエネルギーは循環する。しかしそれが同じ形を取ることは二度と無いでしょう」
「輪廻転生はあると?」
「ないわけではないですね。ただ、使用しているエネルギーが一緒というだけですけれど」
「なら」
蹴鞠は苦笑する。
「ちょっとは救われるかな」
「なにかあったんですか?」
使は興味なさげに問う。
「父親が、ちょっと死んじゃってね」
「成る程。だから琴谷君が貴方を探し回っているんですか」
「コトブキが?」
「ええ。人間にはスマホなんて便利なものもあるのでしょう? 連絡してあげれば?」
そういえば、スマホの電源を切っていたのだった。
電源をつけると、着信履歴が三件程残っていた。
人の中にいるのは苦手だ。
けど、どうしてだろう。
今は、人の中にいたかった。
蹴鞠は、校舎の中央の樹に向かうことにした。
後輩達が弁当をつついているはずだ。
その日は、後輩達と楽しく会話して食事した。
本当に楽しかった。
楽しかったはずなのに、拭えない疲労感のようなものが心の中にある。
焦燥感にも似たそれは徐々に大きくなり、蹴鞠を取り囲んだ。
部室によらずに帰って、ベッドに寝転がる。
もうすぐバイトのシフトの時間だ。制服から着替えて行かなければならない。
けど、どうしてか、行く気になれなかった。
頑張りたくなかった。
無駄なことをしたくなかった。
父の骨壷の傍に、いたかった。
その日、蹴鞠は消息を断った。
スマホの電源も切って、誰からも連絡が取れないようにして。
続く




