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ジエンド

 そのうち、螺旋階段が見えてきた。

 僕達は僕を先頭にそこを登り始める。


 登りおえると、開けた部屋に出た。

 天井に水晶の玉が輝いている。


 そこに向かって、こちらも見ずに念じている老悪魔が一人。


「順調ですか?」


 なにをしているのか、と聞けば自分が部外者だとバレる。

 だから僕は、遠回りに彼のやっていることを探ることにした。


「ケーッケッケ。順調じゃよ。人間の欲望と恐怖を糧に異界に魔物を作る。ワシの仕事は完璧じゃ」


 そう言って、老悪魔は杖を振る。


「こいつが異界の魔物の根源……」


 ダイゴが光剣を手に呼び出そうとする。

 それを、徹が掴んで止めた。


「やめろ」


「しかし……」


「今は魔王暗殺が優先だ。それに、俺達が仕損じた時に後進のレベルアップの方法がなくなるのは困る」


 ダイゴは俯き、悔しげに構えを解いた。


「いるか、シュマン」


 低い声が響いた。

 さらに高い階から響く声だ。


 僕は背すじが寒くなった。

 生まれて初めて感じる絶望感。


 気配だけで、敵わないと悟った。

 まるで、首筋に冷たい刃物を突きつけられているような。

 氷柱を背中に捩じ込まれたような悪寒と、病気に体を蝕まれた時のような吐気を覚えた。


「これはれはジエンド様。今日はマアクの部下が人間を手土産にやってきたようでございます」


「人間を?」


 足音が近付いてくる。


「ヒール」


 優子が小声で唱える。

 僕の壊れたカードホールドが、優子の持ってきた破片とくっつく。


 次の瞬間、僕の頭には角が生え、体には薄い産毛が生えていた。


「アクセルフォー」


 僕も小声で唱える。

 そして、三人を抱えると、来た道を全速力で駆け始めた。

 景色がみるみるうちに後方へと流れていく。


「離せ! 俺は戦う!」


 ダイゴが言う。


「今戦うのは勇気じゃない、蛮勇だ。俺達では、勝てん」


 徹が渋い声で言う。

 あの絶望的な感覚を、全員で味わっていたということだろうか。


「ホーリークロス!」


 城の出入り口に向かって、徹は光剣で十字を切る。

 扉が吹っ飛んだ。


 そして、僕達は町へと踊りだした。

 風景がみるみるうちに背後へと流れていく。


 そして、息が切れるまで走って、全員を下ろした。

 周囲は草原。


「あのクラスの化け物だとまだ異界のゲートをくぐれないのが救いか……」


 徹が悔しげに言う。

 僕達は、終わらせるチャンスを与えられた。それを活かせなかったのが実情だ。


「……どうやって帰ろう。仕切り直しは必要だよ」


 優子が、呟くように言う。

 微かな声が聞こえた。


「ダイゴ、異界は作れるか」


「ああ、初心者だがな」


「そこを通じて上手く現実世界に返してもらえるらしい」


 ダイゴは暫し悩んでいたようだったが、頷いた。


「俺達には修行の時間が必要だ」


 ダイゴの言葉を否定する者はいなかった。

 ダイゴが異界を作る。


 魔界にいたレジスタンス。そしてジエンドという化け物。

 色々なものを残して、僕達は魔界を去ろうとしていた。




続く


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