レジスタンス
その時、僕の耳は囁き声のような微かな声を察知した。
それをかき消すような翼の羽ばたく音。
ドラゴンライダーが一個小隊集まってきていた。
「マアク様はどうした?」
「その者達は人間のようだが……?」
頭上から次々に声が降ってくる。
また、微かな声が聞こえた。
徹とダイゴが光剣を呼んで構えた。
「俺が捕らえた」
少しでも強く見えるように、と、普段は僕の一人称を俺に言い換える。
些細なことだがこれで自信がつくなら楽なものだ。
それに、この演技はそう長くするものではない。
「これから魔王様に献上しようかと思っているところだ。そして、マアク様は異界の破壊に集中し始めた。帰り道が消えたのはその証左」
「おお!」
「なら実験は成功なのか!」
「ああ、お前達はマアク様の帰りに備えて待機していてくれ」
「了解した!」
僕は歩き始める。
その後を、三人は窮屈そうについてきた。
「コトブキの咄嗟の嘘についてはデキがいいな」
徹が耳打ちしてくる。
「僕が考えたんじゃないよ。頭の中に声が響いてきたんだ」
「声? 相手は?」
優子が興味深げに覗き込んでくる。
「……レジスタンスと言っていた。そして、頼みたいのだと。僕に、魔王暗殺を」
「魔王……」
「暗殺……?」
優子と徹は口々に言って、絶句した。
ここで全てが終わるのならばそれも良いかと僕は思い始めた。
異界、魔界、地上界。
この三つの世界が交わっている今がおかしいのだから。
続く
※打ち切りルートではありません




