圧倒
マアクの腹部を殴る。
マアクはくの字になり血を吐いた。
頬を殴る。
マアクの体が傾いた。
ダイゴの体とは言ってもマアクに乗っ取られたこと、勇者のカードのステータス効果、気力転換による防御力向上で強化されている。
それを物ともしない腕力だ。
マアクが反撃の一撃を繰り出す。
それを、僕は指一本で受け止めた。
マアクの目が驚愕に見開かれる。
その顔に、一撃を御見舞した。
マアクの体が吹き飛ぶ。
跳躍してその体に追いつき地面に叩きつける。
マアクの足を持って振り回し、投げ飛ばす。
マアクの体は鳥居に叩きつけられた。
圧倒的だ。
マアクが弱いわけではない。それは、徹を圧倒したことからでも伺える。
それ以上に、僕の身体能力が高まっているらしい。
マアクは血を吐くと、ふらふらと立ち上がった。
「不思議だな、悪魔は高位になればなるほど人間に近い姿になる」
マアクは構えを取る。
「貴様、悪魔だな」
その一言に、僕は図星を指されたような気持ちになって立ち止まる。
しかし、次の瞬間にはマアクに向かって歩き始めていた。
「ならばそれはそれでやりようはある」
マアクはそう言って構えを取ろうとした。
その体が硬直する。
「なに? 思い通りに動かんだと?」
「もう、悪魔に利用されたりはしない」
その二つの言葉は、同じ口から吐き出された。
それは、ダイゴの声だった。
「やれ! ユニコーン。俺ごと四天王を倒せ!」
「猪口才なあ!」
マアクは動こうと苦心するが、動かない。
それほど、ダイゴの意志が強いということだろう。
僕は、手をかざした。
黒い球体が僕の掌に浮かび上がる。
そして、僕は黒い波動を放った。
「ば、馬鹿な!」
ダイゴの体からマアクの存在が消えていく。
そして、ついにいなくなった。
周囲の景色が揺らいでいく。
異界の支配者が消えて異界が消えようとしているのだ。
そして、異界は消え、空の黒は消えるかと思われた。
しかし、景色が変わっても、空は黒のままだった。
「どういうことだ?」
徹が戸惑うように声を上げる。
周囲は見渡す限りの草原。
遠くに山が見える。
見たこともない景色だ。
「感じる……死神の傍にいてその気配をよく知っている俺だからわかる」
ダイゴが呟く。
「ここは、魔界だ」
その一言に、場が硬直した。
続く




