呉越同舟
帰り道はある。
しかし、この場所の雰囲気は異界の物に似ている。
なにより、鳥居をくぐった瞬間に空に広がった闇。
それは、この場所もある意味で異なった場所、異界ということを示している。
(ワープゲートもないのに異界?)
まるで、この世と魔界が混じり合ったかのような。
戸惑いつつも石畳の道を歩き始める。
鳥居の先にはいくつもの鳥居が並んでいる。
その光景は和風怪談のような不気味さを感じさせる。
そして、僕達は再会した。
ダイゴ。
鳥居を見上げ、険しい表情でいる。
周りには唐傘お化けのような魔物の遺体。
ホーリークロスを使ったのか奥の鳥居は少し破損している。
「ダイゴ! これもアークスの仕業か?」
僕は言って、槍を構える。
「ナンバースの実験ではないのか?」
ダイゴは光剣を構えて問い返す。
「ナンバースはこんな人を巻き込むような真似はしない」
「アークスの仕業だったら俺に魔物をぶつけたりはしないはずだ」
沈黙が漂った。
考える。
アークスの仕業ならば、ダイゴがここで魔物と争っているのは確かにおかしい。
「ならここは、隠れ異界なのか?」
ダイゴは戸惑いながら言う。
「ワープゲートがなかった。しかし、魔物が出るなら異界なんだろう」
僕は構えを解いた。
「僕は先に進んでボスを倒す。君とは色々話したいことがあるが、君はここで魔物が現世に出ないよう見張っててくれ」
「待て。ボス退治なら勇者のカードの方が適役だろう。雑魚はあんたがやれよ」
再度、沈黙。
僕はダイゴを見る。
ダイゴは迷惑そうに視線を逸していた。
「呉越同舟といくか」
僕は溜息混じりに言った。
「そうだな。俺達二人ならば、大抵のボスは倒せるだろう」
ダイゴもやむなしと言った感じで答える。
こうして、聖獣と勇者はパーティーを組んだ。
「ヒーラーはいないのか?」
「留守にしてる。待っていれば来るかもしれないが、危険な目に合わせたくない」
再度、沈黙。
それを破ったのはダイゴだった。
「いいだろう。怪我しない自信がない奴だけここに留まればいい。俺は行く」
そう言って、ダイゴは歩き始めた。
僕もその後に続く。
空を見上げると一面の闇。
ダイゴが頭上を見上げて呆けていた理由が少しわかる気がした。
続く




