人質
(こうなれば火力の高い技を試してみるしかないな)
そう決断した僕は、槍を掲げた。
「一投閃華金剛突!」
光が弾けた。
閃光になった槍はゴーレムめがけて飛んでいく。
それを、ゴーレムは腕を交差して受け止めた。
前にある左腕が貫通する。そして右腕を破壊したところで動きを止めた。
光明が見えた気がした。
「五月雨・改!」
光の槍が雨のようにゴーレムの左腕の穴へと突進していく。
そして、穴を広げ、ゴーレムの左腕が落ちた。
(いける。決定力には欠けるが敵わないわけじゃない)
そう思っていた時のことだった。
周囲からどこからともなく鉄が飛んで来て、ゴーレムの左腕の欠けた部分へと早変わりした。
無意味。
本体を叩かなければ意味が無いのだ。
「ははは、流石ユニコーンのホルダーですね。ゴーレムの腕が破壊されたのは初めてだ」
隼太は楽しげに言って、ゴーレムの左腕を伸ばした。
緩慢な動き。ユニコーンの速度でかわせぬ訳がない。
防御と力に勝り素早さで劣るゴーレム。
素早さに勝り防御と力で劣る僕。
対象的な両者だった。
「きゃっ」
予想外の声を聞いて僕は硬直した。
失念していた。
優子には人間を超えるような身体能力もなければ、回避スキルもない。
しかし、普段の優子ならばサンクチュアリでなんとか耐えただろう。
だが、今回はそれがなかった。
ゴーレムの左手に、優子が捕まっていた。
「さあ、先輩。愛しの恋人は僕の手の中だ。大人しくしてもらいましょうか」
隼太は嘲笑うように言った。
絶望。そんな言葉が僕の脳裏をよぎった。
続く




