アーマド
決勝トーナメント表を四人で観る。
準決勝における僕達の相手は夏目隼太チーム。
生徒会長に勝った相手だ。
生憎、徹との決着は決勝戦に持ち越しだ。
「勝てよ」
徹が微笑んで言う。
「ああ」
僕も微笑んで拳を突き出す。
その拳に徹は自分の拳を軽く当てた。
気心の知れた幼馴染だ。約束はそれだけで成立する。
「では準決勝第一試合。隼太チームとコトブキチームは体育館の中央へ」
教師がマイクで仕切る。
僕達は十数メートルの距離を置いて、体育館の中央で向かい合った。
「優子。相手は会長を屠った相手だ。何が来るかわからないから警戒しておこう」
優子の反応はない。ぼんやりと前を向いている。
その肩を、軽く叩いた。
「優子?」
「あ、うん。わかってる。要警戒だよね」
「そゆこと」
「遂に会えましたか、ユニコーンのホルダー様」
隼太だろうか。相手チームから声がかけられた。
「ああ。こっちの手札は筒抜けだろうな。そっちの手札はどうなんだ?」
隼太は微笑んだ。眼鏡をかけて細身な神経質そうな外見だ。
「幻想種のホルダー、とだけ言っておきましょうか」
「それは、怖いな。ま、何種だろうとここまで来る相手となると怖いんだけど」
「弱気な」
隼太が失笑する。
「けど予告しましょう。僕はこの試合、傷一つなく勝つと」
「大した自信だ」
僕は不安になってきた。
相手が切り札を持っているのは確かだ。
例えば、僕が無意識に得意としている行動を読んでいるとしたら?
そこに罠でもしかけられたらひとたまりもない。
しかし、前に出るしか僕は能がない。
結局は、ぶつかってみるしかないだろう。
短い時間でそう結論付けるのと、教師が試合を開始したのは同時だった。
「アーマ」
相手が呟くのと、僕の攻撃が隼太の相方にヒットするのは同時だった。
彼が隼太の威力増幅役だったらたまらないと思ったのだ。
「ド」
隼太は唱え終えた。
そのとたん、床の色が変わった。
木から鉄のブロックへ。
それらは浮き上がり、隼太の体にまとわり付いた。
次の瞬間、隼太は巨大なゴーレムの上半身へと姿を変えていた。
「幻想種のカード、ゴーレム。貴方の天敵です」
隼太は歌うように言った。
「貴方はミスを犯した。相棒よりも僕を先にやっておくべきだった。これは致命的です」
現界での攻撃力に置いては今ひとつなユニコーンのカード。
その弱点をつく敵に、僕の思考は一斉に目まぐるしく動き始めた。
これは持久戦になる。僕の予感がそう告げていた。
続く




