ペア対抗トーナメント戦
今話題に出ているペア対抗トーナメント戦とは、学内で行われる本格的な模擬戦だ。
もちろん相手を殺したりした場合は失格になるが、緊急時に備え探索庁の一流僧侶などが回復役として見守っている。
一年はこの大会を通して入る部を決めるのが常だ。
去年は会長と徹が難敵を退けて一位だった。
そのご褒美が、僕と優子の入部だったのだ。
ただ、去年のレベルのままだと僕か徹が一位だというのは容易に想像がついた。
だから、優勝したらキス、というのは大きすぎる目標ではないのだ。
同じアマでも、プロを相手に戦ってきたアマと、模擬戦しか経験してないアマの間にはやはり溝があると思う。
「ところで君」
申請書を職員室の師匠に持っていると、不思議な問をされた。
「親戚に闘神の類はいるかね」
「いたら今頃大騒ぎだと思うんですけど」
「そうだよなあ、ナンバースの権限で調べてもそんな存在はいなかった」
師匠が僕の親戚関係に違和感を抱いている?
何か不吉なものを感じたが、それを言語化できずに、軽く挨拶して僕はその場を後にした。
闘神の血筋? 僕が?
けど、最近アクセルフォーを使うたびに筋肉痛になる徹を見ていると、確かに自分は肉体強度が強いのかもしれないと思うようになった。
朝あったことを包欠かさず徹に言うと、徹は苦笑いを浮かべた。
「残念だったなあ。優勝は俺と恵さんだ」
「二大会連続優勝を狙うのか」
徹の貪欲さに僕は驚いた。
てっきり、そういうことならと譲ってくれるものだと思っていた。
「だって俺も探索庁入りたいもんよ。履歴書に書けることは多い方がいい」
その一言で、僕は寂しくなった。
騒がしかった学生生活ももうすぐ後半分を切る。
いじめられて辛かった。友達ができて楽しかった。そんな生活が、終わる。
僕の心を察したように、徹は僕の肩を抱き寄せた。
「寂しがるなよ。離れても俺達、親友だろ?」
僕は嬉しくて泣きたいような気持ちになった。
「ああ、そうだな。今回は本気の喧嘩になるけどな」
「君達で潰し合ってくれることにこれ以上の幸いはない」
そう言って眼鏡を押し上げて現れたのは生徒会長だ。
そろそろ会長選が始まるのでもうすぐ元会長になる。
「コトブキの実力を見て十分に鍛え直した。俺も幻想種のホルダーだ。負けんぞ」
そう言って宣戦布告すると、会長は踵を返して帰っていった。
「緑と純子も組んで出場するらしいぜ」
「なんかオールスターって感じだな」
僕は呆れ混じりに言う。
「回復役としての優子は有能だが、きちんとフォローしてやれよな、コトブキ」
「わかってる。優子は僕が守るよ」
「それでこそコトブキだ」
徹が拳を突き出す。僕はその拳に自らの拳を当てた。
そして、その前夜はあっという間にやってきた。
続く




