裏切り
かくして、一行は道の駅に辿り着いた。
車は先に着いており、中から女性が出てきて別の車に移ろうとしている。
こうやって何度も車を乗り換えて追跡を撒く気なのだろう。
近付いていくと相手の護衛が臨戦態勢に移ったので、僕はトランシーバーをポケットから取り出して相手に見せる。
そして、そのスイッチを押して声をかけた。
「歌世師匠に後を託された援軍です。警戒を解いてください」
相手もトランシーバーを取り出して口元に持っていった。
「了解、ご苦労だった。見事な腕前だな。アークス四人を無力化するとは」
あんなの簡単だった、とは流石に言えないので曖昧に微笑む。
その時のことだった。
「ようよう、皆の衆。集まっとるな」
そう言って片手を上げて近付いてきたのは番長だ。
久々の再会に僕は驚く。
「番長、なにやってるんですか」
「なに、俺もナンバースでな。援軍によこされたというわけじゃ」
護衛は顔を見合わせて考え込み、僕達に視線を送る。
「部活の先輩です。危険はない」
僕はトランシーバー越しに言う。
護衛達は安堵したように吐息を吐いた。
女性が車に入る。
一瞬、視線があった。
(綺麗な人だな……)
これが異界の全てを消す少女。
ナンバースの最重要人物だ。
「番長。止まってください」
徹がそう言って手に光剣を作り出す。
「なんじゃ徹。物騒じゃの」
「止まって。止まらないと俺は貴方に斬りかからねばならなくなる」
番長は足を止めた。
僕は戸惑った。徹の真意がわからなかったからだ。
「殺気がします。貴方からも、木陰からも。貴方は、ナンバースではありませんね?」
ナンバースの二人は慌てて懐に手を入れた。
その間に、番長は距離を詰め、護衛二人の腹を龍の爪で刺し貫いていた。
「流石じゃのう徹」
「番長、どうしちゃったんですか、番長」
僕は目の前の状況が信じられず、思わず叫ぶ。
「アークスが一人、番田チョウジ。それが今の俺の肩書きだ」
その場にいる全員が衝撃を受けたのがわかった。
護衛が倒れて女性は一人きり。
僕はユニコーンのカードを発動させて、バンチョーと女性の間に割って入った。
続く




