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いつの間にか僕は登りつめていた

 トランシーバーをポケットにしまい、僕は車から一旦距離を置く。

 エンジンを損傷し強制的に機能停止状態になった車は、しばらく走っていたが、そのうち速度を失い完全に止まった。

 車からアークスのメンバーなのだろう大人達が数人ぞろぞろと出てきた。


 そして、彼等は僕を視認すると、一斉に銃を取り出し、構えた。


「ゼロ・ストーム!」


 槍の高速回転による絶対的な防御と銃声が鳴るのは同時だった。

 乾いた音がして銃弾はあちこちへ飛んで行く。


 相手は四人。三人がこちらの行動を縛り、一人が異界を開こうとしている。

 僕は前へと跳躍して、一瞬で数十メートルの距離を詰めた。


「チャージ!」


 光のような速さで異界を開こうとした一人の腹部に槍の柄の先を叩きつける。

 相手は血を吐き出して吹き飛んでいった。


 そして、返す刀で一人の後頭部を叩きつける。

 相手は脳が揺れ、その場に蹲った。


 再び銃声が鳴る。

 しかし、遅い。


 銃口の角度さえ確認すれば後はその射線からずれればいい。

 そして、僕の速度は彼等の視認能力より遥か上にあった。


「五月雨・改!」


 光の槍が幾重にも空中に現れ、相手に一斉に襲いかかる。

 しかしそれは撒き餌。

 回避運動に集中したところを射線を迂回して襲いかかる僕の身体自体が本命。

 のはずだった。


 なんと、五月雨・改の一斉掃射だけで相手はボロボロになり、その場に蹲ってしまった。

 これがアークス?

 ナンバースの師匠達のライバル?


 正直な感想を言ってしまえば、弱すぎる。

 三軍メンバーを出されたような気分だ。


 しかし、この連中からナンバースの人々は必死に逃げていた。


(もしかして……)


「僕が、強くなっているのか?」


 強敵との連戦で感覚がおかしくなっているらしい。

 銃を持つ相手は普通の感覚からすると相当な脅威だ。

 それを、恐ろしいとも思わなくなっている。


 今回はアクセルさえ使っていないから、完全な舐めプだ。


 僕は蹲ったり倒れたりしている敵を一瞥すると、自分の手のひらを一瞬見つめて、跳躍して屋根の上を移動し始めた。

 目指すは合流地点。

 安全に合流できそうで一安心と言ったところだろう。


 師匠とコースケはどうしているだろう。

 それだけが気になっていた。



+++



 歌世は槍を構えて目を閉じていた。

 左方向で地面を蹴る音がした。


 体をそちらに向けて目を開く。

 眼前には既にコースケの体があった。


 槍と金棒がぶつかり合う。

 相手はパワードツーを使っている。不本意ながらも、歌世は吹き飛ぶ形になる。


 そこにさらに、コースケは飛び掛かってきた。

 歌世は槍を地面に突き立てて吹き飛ぶ方向を僅かに変える。

 コースケは舌打ちして、歌世の斜め上空を通り過ぎていった。


「やめな、コースケ! アクセルトゥエルブにパワードツーの重ねがけなんて、鬼のカードである程度補強されているにしても、筋繊維がどんどん傷ついて使い物にならなくなるよ!」


「才能のある人にはわかんないよねえ」


 コースケは地面を蹴り、その時には歌世は地面に着地している。


「そうでもしないと勝てないだろ! 歌世ちゃんには!」


 再び金棒と槍がぶつかりあう。

 しかし、真っ直ぐに降ろされた金棒は槍に逸らされ、地面を叩いた。

 歌世は槍でコースケの太腿を狙う。


 しかしコースケは後方に飛んでそれを回避した。


「わかってるのかい、コースケ。あんたは特別筋繊維が強いわけじゃあない。ブースト系の術には向いていないんだ。使うにしても、回復役は必須となる」


「けど、やるよ」


 コースケは息を切らしながら言う。


「歌世ちゃんと決着をつけるのが今回の僕の仕事だ。僕はアークスとしての僕の責務を全うする」


「……覚悟の上ってことかい」


 歌世は再び槍を構えた。


「なら、私も本気を出そう」


 コースケの表情が一瞬真顔になった。


「今までが本気でなかったとでも?」


「ああ。私もこの学校の平和とやらに毒されすぎた。あんたを傷つけたくないなんて思ってしまった」


 コースケの表情から徐々に笑みが消えていき、剣呑な表情になる。


「私も本気を出そう。コースケ。これが私がユニコーンのカードを後進に託すのを躊躇わなかった理由だ」


 歌世は唱える。


「パワード、テン」


 コースケの目が大きく見開かれた。



続く

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