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選抜チーム

 昼食後のまどろみの中で進む老教師の授業風景。

 そんな中で、部屋の扉が勢い良く開いた。


「コトブキ君、徹君、緑君、恵はいる?」


 師匠が大声でそんなことを叫ぶ。

 血相を変えるとは正にこのことだろう。


 僕は思わず中腰になった。


「はい」


「椎堂先生、悪いけどこの四人お借りします」


「わかりました。皆~授業の続きをやるから静まって。琴谷君達は早く行きなさい」


「はい」


 僕らは立ち上がって教室の外に出た。

 師匠が深刻な表情でそこには待っていた。


「ちょっと厄介なことになっている」


「厄介なこと?」


 緑が怪訝そうに言う。


「黄昏の聖女の所在がアークスに掴まれた」


 沈黙が漂う。

 師匠はバリバリと八つ当たり気味に髪の毛をかいた。


「ナンバースの最重要保護人物だ。彼女は異界のものを全て無効化できる。異界の実験をしているアークスにはこれ以上なく欲しい人材だろう」


「異界のものを無効化?」


 徹が信じられない、とばかりに言う。


「そうだ。君の潮風斬鉄はわからないが光剣なんてたちどころに消されちまうぞ。護衛の半数はアークスに捕らえられた。残りの数人で今聖女を移送中だ」


「で、俺達になにをしろと?」


 緑が胡散臭げに言う。


「アークスの足止めに協力してもらいたい。現在各地でアークスのチームとナンバースのチームが衝突している。その中でも自由になっている遊撃隊は聖女に追いつくのも時間の問題だ」


「だってよ」


 緑は両手を後頭部で組むと、面倒臭げに天を仰いだ。


「行きます」


 僕は答えていた。


「師匠から聖獣のカードを貰った恩、まだ返してはいません」


「コトブキがそう言うなら幼馴染の俺は協力するまでだ」


「徹!」


「殺し合いかあ。やんなっちまうぜ。まあここで俺だけ逃げたら友達じゃないよな」


「緑!」


「ありがとう」


 師匠が複雑な笑みを浮かべて頭を下げる。


「じゃあ行くわよ。ここからは持久戦になる。どこまでアークスの追跡を阻めるか」


「わかりました。僕は戦います」


「私も連れて行って!」


 いつの間にか、僕らの背後に優子がいた。

 真剣な表情で、自分の胸の中央に手を当てている。


「私の回復は必ず役に立ちます。恵ちゃんより私のほうが回復特化だもの」


「……言葉に甘える。本当は巻き込む人間をこれ以上増やしたくはなかった」


「優子! 君は待っていてくれればいいんだ!」


 僕は思わず優子の肩を両腕で掴む。

 優子はそれを、掴んだ。


「引かないよ、コトブキ。コトブキと徹が命をかけている時に私だけが安穏と授業を受けているわけにはいかない」


「じゃあ、まずは僕が相手だね」


 そう言って教室から出てきたのは、アークスのコースケだった。


「楽しい学校生活だった。アークスの一員だってこともさっき連絡のメールが来るまで忘れていたほどに」


 異界が広がる。

 周囲に草原が広がった。


「ようこそ、僕の異界へ」


 そう言って、コースケはカードホールドに鬼のカードを挿した。

 その頭頂部に角が生え、手には金棒が握られる。


「アクセル、トゥエルブ」


 コースケはそう高々と唱えた。



続く

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