呪詛
僕と勇者は剣と槍で押しあった。
腕力はややあちらが勝る。僕は徐々に押されていく。
「何故こんな酷いことをする!」
「酷いこと?」
勇者は不思議そうな顔をする。
「皆幸せになれると思ってここに来たんだぞ! それを幻術で陥れて、命まで奪う。これを酷いと言わずなんと言う!」
勇者は小さく笑った。
「噂話を真に受けるような愚か者は死んで良かった」
勇者はぐっと力を込めた。僕は押されて膝をつく。
コースケが勇者に向かって金棒を持って飛びかかった。
勇者は僕を蹴り飛ばし、コースケの一撃を受け止める。
コースケも僕も師匠もスピードでは圧倒的に勇者に勝っている。
しかし、勇者は技量だけでそれに対応している。
敵ながら見事としか言いようがない。
徹が勇者に向かって斬りかかった。
しかしそれは、氷の壁に阻まれる。
やはり魔法使いだ。
魔法使いをどうにかしない限り状況は進展しない。
「噂話を真に受けるような愚か者は死んで良かったのだよ。お前達もその口だろう」
「なにを……」
「俺は噂話に人生を壊された。報復してなにが悪い」
そう言うと、勇者はダーククロスを放った。
僕とコースケと師匠は素早く散り、徹はプロテクションでそれを防ぐ。
一分一秒がやけに長く感じる。
終わりの見えない迷宮に迷い込んだような気分だった。
続く




