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台風一過
何者だったのだろう。
目の前から忽然と消えた魔法使いの女のことを思い、緑はそう考えていた。
三対一。数で勝るのはこちら。特にパワードとアクセルを駆使した恵の猛攻は目覚ましいものがあった。
しかし相手の魔法使いは氷の魔術だけでそれを無効化し続けた。
結局、結果は引き分け。
いや、相手の勝ち逃げと言うべきか。
恵は笹丸の治療に集中している。
徐々に塞がっていく傷口を見て、緑はひとまず安堵した。
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「ん。呼ばれるみたい。思ったより苦戦してるのね」
水晶玉を持った女性はそう呟くと、手に持ったそれを優子に手渡した。
優子は不審がりながらもそれを受け取る。
「貴女達と私が戦ったらどちらが勝ったかしら。ちょっと興味深いわ」
妖しく女性は微笑む。
その微笑みに絶大的な自信を感じ、優子は背筋が寒くなった。
次の瞬間、女性はその場から消えていた。
そして、水晶玉に映った歌世とコースケの対戦相手の傍に移動していた。
「チーム戦が始まる……」
優子は、ぽつりと呟く。
遠く離れた自分にできることは何もない。
ただ祈るだけだ。コトブキの勝利を。
続く




