死神のホルダー
鉄と鉄がぶつかり合う澄んだ音がした。
驚いて音がした方を見ると、徹がいつの間にか背後から現れた敵の鎌を潮風斬鉄で防いでいた。
徹はそのまま、背後に肘打ちをする。
死神の如き敵はまともに喰らい、咳き込んだ。
その隙に、僕は突進していた。
ユニコーンのカードの超速度。
それを、相手は影に沈むことで防いだ。
数メートル先に、彼は姿を現す。
「気配はなかったはずだ」
「殺気があった」
徹は淡々とした口調で言う。
「殺気の類に俺は敏感だ。勇者の力、舐めないでもらおう」
「そうかそうか。なら、真正面から破るのみだ」
そう言って、相手は手をかざした。
僕と徹の動きが止まる。
まるで、その場に縫い付けられたような。
「死神のカードは影を操るカード。これを破るのは余程の能力者だ。影を縫い付ければ、本人も止まる」
悔しいが相手の言うとおりだ。影を縫い付けられて動きが取れない。
「徹。なんとか手、動くか」
「やってみている」
徹は感情を殺した声で言う。
徐々に、徐々に、僕と徹の手は動いていった。
「驚嘆すべきだな。影縫いを破るか勇者達よ」
死神が飛びかかってくるのと、僕の槍と徹の刀が交差するのは同時だった。
「ブレイクスペル!」
異口同音に叫ぶ。
そして、死神と対峙した。
ブレイクスペルによって邪悪な術は消え、体が自由を取り戻す。
徹は真正面から。僕は側面から、死神を迎え撃った。
徹が死神の鎌を潮風斬鉄で受け止める。
そこに、僕は攻めの一手を打った。
「五月雨・改!」
光の槍が空中に幾重も現れ、敵に突進する。
死神が動こうとするが、動けない。
「次はお前が動けなくなる番だ」
徹は笑い顔を引きつらせながら言う。
刀は鎌を押しており、鎌を引いた瞬間丸ごと敵を討つのが見えていた。
「詰んでいるんだ、お前は!」
「おのれおのれ」
その次の瞬間、敵は自らの影の中に沈んだ。
徹は勢い余って前のめりになり、慌てて五月雨・改を回避する。
「……退いたか?」
「邪悪な者の気配は消えたな」
「……そうか」
徹は残念そうに言う。
僕も残念だ。
あの敵が他の仲間の前に現れたなら。そう思うと恐ろしい。
「先を急ごう」
徹に促され、僕らは再び駆け始めた。
続く




