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暗躍する者

 四天王マアクは魔王城の玉座の間に呼び出されていた。

 片膝を付き、頭を垂れて魔王の言葉を待つ。


「ニムゲとデモンが破れた」


 魔王の言葉に、マアクは衝撃を受けた。

 二人共四天王。悪魔の中でも指折りの猛者だ。


「それも、同じ者達にだ。我々も対策を考えることにした」


「恐れながら、いかなる対策でしょうか」


「敵は聖獣のホルダー。少数精鋭で仕留める」


「少数精鋭、と言うと?」


「なに」


 マアクは恐る恐る顔を上げる。

 魔王は唇の端を持ち上げた。


「人間に協力してもらうのだよ。もし失敗してもこちらの懐は痛まない」


「人間に……?」


「そうだ。人間だ」


 魔王の笑い声が城の中に響き渡った。




+++




「帰らずの異界?」


 緑の言葉に、僕は戸惑った。


「あるらしいぜ」


 緑は紙パックのジュースを片手に言う。

 僕の隣の席に腰を勝手に下ろしている。


「なんでも幸せすぎて帰ってこれなくなるらしい」


「そりゃ、なんていうか……凄いね」


 幸せすぎて現実に帰れなくなる。それほどの幸福なら一度体感してみたいものだ。


「県内にあるの?」


「あるらしいぜ。最近ニュースでやってる行方不明者は主にこれが原因らしい」


 そういえば朝のニュースでそんな話題があったかもしれない。。


「帰らずの異界かぁ」


「一度行ってみたいよなあ」


「緑でもそういうこと思うんだ」


 緑は肩をすくめる。


「不良になるってことはなるだけのストレスがあるってことさ」


「ふーん。例えば?」


「話すようなあ話でもねえ」


 そう言って、緑はストローに口をつける。


「コトブキ!」


 笹丸が教室の入り口から僕に声をかける。


「歌世ちゃんが呼んでるぞ」


「わかった。職員室だね」


「だな」


「じゃあ行くよ、緑」


「ああ、いってらっしゃい」


 なんのようだろう。そう思いながら廊下を歩く。

 師匠からの呼び出しなんて珍しいことだ。


「失礼します」


 そう言って、職員室に入る。

 師匠は自分の席に座っていて、ひらひらと手を振った。


「やあ、悪いね休み中に」


「いえ、なんの用ですか?」


「君の意見を聞きたいんだ」


「と言うと?」


「帰らずの異界に行ってみる気はないかい?」


 僕は息を呑んだ。

 まさにさっきまで緑と話していた異界ではないか。




続く

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