海辺にて
目の前には見渡す限りの水平線。
涼やかな風が体を撫でる。
徹と七代目斬鉄は海辺を歩いていた。
「季節外れですけど心地いいですね」
「もうすぐ暑くなって水泳客で一杯になるだろうな」
他愛ない話をして過ごす。
「昼飯食うかあ」
そう言って、徹はシートを敷いた。
二人共、コンビニで買った菓子パンだ。
「波の音を聞きながらご飯を食べるのも乙なものですね」
七代目斬鉄が楽しげに言う。
「うん。このシーズンはまだ涼しいから丁度過ごしやすい」
七代目斬鉄は海を見渡した。
「綺麗だなあ」
「夏になれば大変だぞ」
「大変?」
「バーベキューのゴミとかが散乱する」
「せっかくの綺麗な浜なのに……」
「だから今が見頃なんだ」
そう言って、徹はメロンパンを齧る。
「ちょっと水に入ってみようかな」
「暖かくなってきたからそれもありじゃないの」
「そうですよね。靴下脱いでっと」
そう言って、斬鉄は靴下と靴を脱いだ。
満喫しているようで何よりだと徹は思う。
「なあ、あんたの七代目斬鉄って屋号だろう? 本名はなんなんだ?」
「小鈴」
斬鉄は躊躇わずに言う。
隠しているわけではないようだ。
「よろしくな、小鈴さん」
「よろしくお願いしますね」
そう言って、小鈴は海に踝まで入っていった。
徹も、微笑んで靴下を脱いだ。
暖かくなり始めた六月も半ばの頃だった。
今度は上手くやろう。
徹は、波打ち際で遊ぶ小鈴を見て強くそう思った。
こうして、徹の優子への初恋は終わった。
続く




