罰
徹はカードホールドの聖騎士のカードをサブカードに移動させると、メインカードの位置に勇者のカードを挿した。
潮風斬鉄が光りに包まれる。
唖然とした表情をしていた藤吾は、狂ったように斬りかかってきた。
「返せ! 勇者のカード!」
徹は無表情に潮風斬鉄を振るう。
藤吾の刀はその手を離れ、空中で回転して地面に落ちた。
「さて、罰の時間だ」
徹はそう言って、藤吾の喉元に刀を突きつける。
藤吾は武器をも失い、青ざめている。
「逃げろ」
徹は、淡々とした口調で言う。
「逃してくれるのか……?」
藤吾は戸惑うように言う。
「ああ、逃げろ。そして警察に怯えて逃げ続けろ。それが俺がお前に与える罰だ」
そう遠くないうちに捕まるだろうけどな。そう、徹は心の中で付け加えた。
藤吾は転びそうになりながらも逃げていく。
徹はただ、それを無言で見守った。
どんな気分だろう。周り中の全てに怯える毎日というのは。
それを終えた後に法律で裁かれる気分というのは。
それは十分に重い罰だ。
「終わったのか?」
斬鉄を拾っているところに、コトブキがやってきた。
「ああ、終わった」
そう言って、徹は二本の斬鉄を鞘にしまった。
藤吾にもう人から物を奪う力は残されてはいない。
こうして、事件は終わりを告げた。
続く




