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「…で?なぜその子は今日もここにいるんだ?」


 翌日、教室にはエイデン、クリフ、アニッサ、そしてソフィアに抱っこされているパトリックの5人が揃っていた。

 担任のオデッセの質問に俺は手を上げて答える。


「俺の子が学校に来たいって言ったからで~す。」

「ここは託児所じゃ無ぇぞ。」

「え~。じゃあ、俺ん家に一人置いてけっていうんですか?先生酷~い。」

「うるさい。お前ん家なら世話してくれる人が何人もいるだろうが。」


 オデッセの言う通りである。昨日パトリックを自宅へと連れ帰ると、シメオン邸にいる全員がパトリックを可愛がった。俺も見たことないぐらい皆が献身的に世話を焼いており、こんなチームプレー出来たんだって驚くほどだった。…あれ?俺、次期当主だよね?


「…なぜお前じゃなくソフィアに懐いてるんだ?」

「………パトリック、こっち来い。」

「ヤダ。ここが良い。」


 速攻フラれた。……あれ?俺、一応父親だよね?




「…はぁ。まぁ、良いとしよう…。だが、パトリック、お前は帰る手段はあるのか?」

「「「?」」」



 行き場の無い手に白目を向いていると、オデッセが真剣な眼差しをパトリックへと向けた。皆がオデッセの発言に疑問符を浮かべる。



「先生、どういう意味?」

 すぐにアニッサが聞き返す。



「空間移動はお前らのようにある程度の実力があれば可能となるが、時間移動となると話は別だ。時間移動は空間移動と時空操作を緻密に計算しなければ成しえない。上級魔導士でも到底出来ない偉術だ。ましてやその年齢だ。自分でまた未来に戻れるのかを聞いてる。」


 確かに、時間移動なんて考えただけでもめんどくさそうなことやろうと思ったこともなかった。オデッセの質問に皆の視線がパトリックへと向かう。


「うん…。大丈夫。ぼく、帰れるよ。」


 ソフィアに抱かれながらまっすぐオデッセへと返事を返す我が息子には賞賛しかない。



「え?流石俺の息子。やばくね?」

「パトリック、すごいね~!」

「…こればかりはエイデンに同意せざるを得ないね。」

「あんたの遺伝子ってどうなってんの?」


 すごいすごいとパトリックを撫でるソフィアと嬉しそうな表情を浮かべるパトリック。

 別にうらやましくなんかない。


 その日からアッパークラスの教室にパトリックが居るのが当たり前となった。














 パトリックが俺らの所へ来て2週間ほど経ったが、パトリックは早々にここでの生活に慣れた。

 パトリック曰く、クリフ、アニッサ、そしてなんとオデッセのことも元々知っており、クリフおじさん、アニッサさん、オデッセ先生と慣れた様子で皆と関り、言わずもがなシメオン邸は勝手知ったる我が家である。 

 

 その2週間で俺とソフィアの関係には大きな変化があった。

 なんと、今までは学校での関りしか無かった俺らが、あれから何度かパトリック主催でスイーツ巡りや買い物に行ったりとプライベートでも過ごしたのだ。パトリック込みだったがデートと言っても過言ではないだろう。

 今日なんて俺の家に(クリフとアニッサも居たが)ソフィアが遊びに来た。俺の部屋にいるソフィアを見るともう結婚したのかと錯覚を覚える程だった。



「…ねぇ、パパ…。」

「?」


 今日の余韻に浸っていると、ベッドに寝そべり今にも寝落ちしそうなパトリックが俺に話しかけてくる。




「…ママの事好き?」

「は?」

「………今のパパとママ、楽しそうでぼく大好き。」

「…?」



 どういう意味か聞き返そうにもパトリックはあっという間に眠ってしまった。シメオン邸をソフィアに紹介しようとはしゃぎすぎて疲れてしまったのだろう。

 起こさないようにパトリックの俺と似たやわらかい髪を撫でる。


「……す……………、」


 …やはり恥ずかしくて言えない。真っ赤に染まった顔を隠すように静かに指を鳴らし、ベッドサイドの照明を消した。





アルファポリス様で先行公開しております。

https://www.alphapolis.co.jp/novel/228701778/530610766

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