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ジャン・クリフトフ魔法学園の卒業生は基本的に魔導士組合に入る。その組合の中枢機関がこの魔導士の塔と呼ばれている場所なのだが、先ほどからグラン国の魔導士ではない服装がソフィアの目に入った。
(…これがエイデンが言ってた…、)
隣国『イリノス』の魔法使い。
真っ白なマントに金色のライン。真っ黒なグラン国の魔導士とは正反対の煌びやかな服装は塔の中で目立つ。ソフィアがキラキラとした修道士の様な出で立ちの集団にぺこりとお辞儀し横を通り過ぎようとしたとき、「あの…」と鈴を転がしたような声を発する綺麗な瞳と目があった。
◇
「あれ?俺が来たからエイデンは来ないと思った。」
「俺も来る気無かった。マジめんどい。」
「こら、父親になったんだから口には気をつけな?」
「へーへー。…で?どんな感じ?」
応援要請があったグラン国とイリノス国の国境付近に到着すると崖の上から戦況を眺めているクリフが居た。こいつはまだ参戦していない様だ。マジで俺いらなくね?
「う~ん。なんかおかしいっていうか…。」
「?」
「さっきまでは中レベルぐらいの奴がわんさかいたんだけど、そいつらが引いたと思ったらあれが急に現れたんだよね…。」
クリフがアレと指さす方には人の何倍もある大きなムカデの大群だ。
「キモッ。何あのムカデ。つか、ムカデってこんな乾いた峡谷居なくない?」
「そうなんだよね…。しかも本当に急に現れて何処から湧いたのか俺も気づかなかった。」
「…。」
クリフでも気づかなかったなんて相当潜むのがうまいのか、それとも…――
俺は再び戦況を見下ろす。組合の魔導士が巨大ムカデを倒そうと格闘しているがムカデの量が多すぎて押され気味だ。
「……今度組合全体の力を底上げしねぇとな…。」
「それは思う。これだと負傷者ばかり増えて俺らも休む暇が無いからね。」
「そもそも学校が緩すぎたんだよな。教育から変えるべきだな。」
俺はそう言うと一気に辺りを焼き払った。
「「…っ!」」
「「「組合長!?」」」
「「クリフ(さん)!」」
「おたくら何してんの?こんな奴らごときで呼ぶなよな…。…ほら、燃えないように自己防衛はしろよ。一気に行くぞ。」
「危ないから皆さんここに来た方がいいですよ。」
「「「……!?」」」
ニコニコと笑顔で声を掛けるクリフに崖下に居た魔導士が一気に背後に集まった。負傷して動けない奴はクリフが回収し、皆が移動したのを確認すると俺は火力を強めて崖下を炎の海へと変える。嫌な瘴気を放ちながらムカデの大群が燃えていく。
(……魔力だって平均だ。核に問題もない…。量が多いにしてもここに派遣した奴らが倒せない量でも無い…。)
いたって異常な点は見当たらない。だが何かが引っかかる。
神経をとがらせながら藻掻きうごめくムカデを眺めるエイデンは部下の怯えた視線など気づかない。
『組合長は何を考えているんだ…。』
『よくあの地獄絵図を眺められるな…。』
『猟奇的に見えるのは気のせいだよね…?』
クリフがフォローを入れるまで、先輩だけど部下な組合員はプルプルと怯えたままだったらしい。
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