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眉間に皺を寄せ、明らかに不機嫌ですという顔をしているエイデンを無視して私は周りを見渡した。負傷した魔導士の方々と救護班の先輩魔導士の視線が大いに注がれており一気に頬に熱が集まる。
「見せつけられるためにエイデンがここに居ること黙ってた訳じゃねぇんだけど。邪魔すんなら帰りな。」
「ちっ!違うんですカトリーヌ先輩っ!!」
急いで立ち上がり否定するも先輩の視線は酷く冷たい。
「お前こそ俺らの邪魔すんなよカトリーヌ。」
「んだとこらっ!さっさとお前は現地に行けっ!お前が行かないせいで負傷者が溢れかえってんだよっ!!…おいっ!そんなかすり傷程度でここに来んじゃねぇっ!てめーはてめーで治せっ!!」
そう。今我々が居る場所は負傷した魔導士で溢れかえっている救護室だ。運ばれてくる先輩やら後輩やらに気を使うこともなく立ち上がったエイデンは再び圧し掛かるように私を横から抱きしめた。
「ソフィアチャージしないと俺動けなーい。」
「黙れカス。さっさと死に行け。」
「というか、ソフィア働かせていいなんて俺許可出してないんだけど。」
「ゾル様からの許可だよ。」
「はぁ?あのじじぃっ!勝手なことしやがってっ!」
「いや、エイデン、私も了承したわけだし…、」
「私に権力があればお前を組合長の座から引きずり下ろす。」
「出来るもんならやってみろ。」
「…ッチッ!なんでソフィアはこんなやつと結婚したんだよ…。おいっ!自分で治癒できる奴は来んなっつってんだろうがっ!」
「いや、だって、自分でやると時間が…」
「あたしらだってこんな人数対応してたら時間かかるっつーのっ!!!」
「はは…。」
エイデンと口喧嘩しながら大声で怪我人に中指を立てているのは3こ上の先輩であるカトリーヌさんだ。学生時代から何かとお世話になっていたが、割と気性が荒い性格だからエイデンとも何度か衝突していた。何度エイデンとの婚約解消を投げかけられたか分からない。
「カトリーヌ、一つベッド借りるぞ?」
「は?…おいっ!!」
エイデンは容赦なくベッドに横になっていた怪我人を隣のベッドに移し替え(相席になった)、ベッドの周囲を外観から遮断し密室空間を作り出した。周りの音も景色も無くなる。真っ白な空間。
怪しい雰囲気を察してエイデンを振りかえると思ったよりも近くに居て私はベッドに座り込んでしまった。そして私の身体を両膝の間に挟んでベッドに上がってきたエイデンに思わず身体がのけぞる。
「エ、エイデン?」
「ん?」
「ん!?じゃないよっ!早く行かないの!?」
「待って。さっきの続き。」
「続きって…!?」
遂に頭がベッドに沈む。私の両手を捉えると絡みついてくるエイデンの骨ばった指。
「…っん…、」
「…………、ソフィア…。」
当たり前のように重なる唇。何度も角度を変えて溶かしてくるエイデンに遂に何も考えられなくなる。
どれだけの時間触れていたのか分からない。長くも感じたし、物足りなくも感じた。唇が離れるとエイデンは横に転がりぎゅっと私を抱きしめた。
「はぁ゛~~、行きたくねぇ…。」
「…エイデン、」
「分かってるよ。」
いつもとは違う優しい声を紡いで、チュッと唇が額に落とされる。前々から思っていたが、エイデンはキスが好きだ。
「…無理すんなよ?」
「ふふっ、大丈夫だよ。パトリックの事も心配だからすぐ帰るし。」
「怪我もすんなよ。」
「それはこっちの台詞。」
「…俺の事心配すんのお前ぐらいだぞ?」
「…そんなことないと思うけど。」
(…たぶん。)




