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話は脱線してしまったが、エイデンは今現在魔導士の塔の組合長という地位に就いている。(この役職に就くまでにも色々あったが、その話は割愛しておこう。)
組合長となった今、魔導士の派遣の割り振りはエイデンが行っているのだが、部下だけを派遣して自分は現地に飛ばないなどそんな甘い話は無く、むしろエイデンの特異性上、危険性が高かったりするような現場には彼一人で行った方が早く解決するような場合もある。そういった場所にはすんなり足を運ぶのだが、時たまこうやって誰でもよかったりエイデンが自ら行かなくても大丈夫だと判断した現場には、その地から応援要請が来ても駄々をこねて向かおうとしないのだ。
そんな時は決まって私の場所へと泣き面の魔導士の方々がやって来る。今やエイデンの手綱は私が握っているとも言われていて私自身何とも言えない。
私は大きな体を折り曲げ床に座りながらブーブー文句を垂れているエイデンを見つめなおし、しょうがない、とエイデンとの距離を埋める様に腰を下ろした。
「…エイデン?いつも大変な仕事ばかりで負担かけてごめんね?」
「………別にソフィアのせいじゃねぇじゃん…。」
「ふううん。私ももっと強ければエイデンにだけ負担が掛かることなんて無かったんだし。」
「……別に、こんなもん負担でもなんでもねぇけど…、…お前が現場に行くのは俺、反対だし…。」
弱弱しく小指だけが握られ、そのいじけている少年の様な行動に思わず笑みが零れる。
「…きっとエイデンが来たら皆安心すると思うんだ。私だってそうだったし。」
「…。」
「どんなに戦況が悪くてもエイデンが来ただけで光りが見えるの。…エイデンが居るだけですっごく心強いんだ…。…でもエイデンも疲れちゃうよね、こんなに働いて頼りにされてたら…。」
「……。」
「…この仕事から帰ってきたらお休みもらろう?私がさっきの秘書の子に相談しておくし。働きすぎも良くないからね。それで、帰ってきたらエイデンの好きなことしよう。今日は私がご飯作って待ってるからさ。」
「………ソフィアの手料理?」
「うん。何が食べたい?なんでもいいよ。」
「………分かった。……ビーフシチュー食べたい。」
答えながらコテンとエイデンの頭が肩に圧し掛かる。その可愛らしい反応に再び笑みが零れた。甘えてくる彼を受け止め、サラサラだけど意外と硬い髪を梳かすように撫でる。
「うん、分かった。とびきり張り切って作っちゃう。…だから、怪我しないで帰ってきてね。」
「…。」
黙り込んだエイデンは握っていた小指を放し、恋人つなぎへと変えた。そしてその王子様の様なキラキラとした顔が近づき――
…――私はその口元を手で抑える。
「………は?」
「いやっ!だってっ!!
――ここ、救護室だしっ!!!!」




