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「放してってばっ!!!」
私は鳥形の魔獣の足に捕まりながらもぞもぞと身体を動かす。せめて腕が自由に動けば良かったのだが、がっしり両腕とも身体と共にホールドされておりこんなんじゃクロスボウも使えない。
先ほど先生と目があったため、きっと助けてくれるだろうが、オデッセ先生の事だ。ギリギリにならないと助けてはくれない。なんとか自力で出来るところまでは頑張らなくては。
「おいっ!おいってば、このカス野郎っ!!!」
その時、下から叫び声が聞こえ、私は視線を下に向ける。
「今からそいつ燃やすからなっ!」
「!!??」
まさかの下から私を追いかけ叫んでいるのはエイデン君だった。
(え、ナニナニ?…この鳥形魔獣、エイデン君のターゲットだったの…?)
この森に入って一番大きく、レベルが高いであろう魔獣だ。彼の獲物になっていても無理はない。だが、如何せんその魔獣につかまっているのは私だ。彼が攻撃したら確実に巻き込まれる。
「えっ!ちょっ!ちょっと待ってっ!!」
「うるせぇな!愚図がっ!そんな雑魚相手に捕まりやがってっ!!」
(めっちゃ怒ってる!めっちゃ怒ってるけど、何でっ!?)
いつも不機嫌気味だが、いつもはどちらかというとさらっと貶すか無視するに近い感じなのだ。…いや、冷静に考えると滅茶苦茶嫌われている…。
普段の自分とエイデン君の関係性について考えていると魔獣の動きが変わり身体がグラッと動いた。前を見やるとそこには新しい鳥型の魔獣。
(え!?今度は何っ!?)
キエェェエエ!
キエエェエエエ!
(嘘でしょっ!?)
なんと「私」という獲物を奪い合うように魔獣同士で喧嘩をしているのだ。
魔獣の鋭い爪の付いた足が私に向かってガシガシと襲い掛かる。が、私を捕まえている魔獣がそれを阻止し身体が揺れる。
(いや、コレどっちに転んでも助からないヤツ…!)
その時、下から大きな舌打ちが聞こえた様な気がした。
ボフッ
(…っ!?)
視界に広がる大きな炎。気づけば鳥の足から解放されており、目の前には炎に包まれた魔物2体。そして私はというと…――
「っ!ギャー―――!!」
当たり前だが落下している。あいにく浮遊魔法はまだ習っていない。習っていたからと言って出来るかは定かではないが、とりあえず自身には治癒魔法しか使えない。先生の姿はまだ見えない。これは自分で何とかしろということか。
(こうなれば受け身を上手くとって、その後治癒魔法で自己処理する!?そういうことっ!?いや、打ちどころ悪かったら死ぬって先生っ!!)
「おいっ!」
どう対処しようか考えていると再び下から聞こえてくる叫び声。
「重力操作しろ!」
「!?…で、出来ないっ!」
「はぁ!?んなことも出来ないのかよっ!!」
「ご、ごめんなさいっ!」
逆になぜあなたは出来るの!?と思いながら苛立ちを隠さず叫ぶエイデン君に思わず私は謝ってしまう。というか何で…――
「エ、エイデン君何してるのっ!?危ないからっ!!」
なぜか私の落下地点に向かって走っているエイデン君。このまま行くと確実に私たちはぶつかる。これじゃぁ負傷者が増えてしまう。
「エイデン君っ!」
「うるせぇボケナス!黙ってろっ!!!」
「…っ!?」
何故キレているのか分からない。綺麗な顔をしかめて叫ぶエイデン君に言葉が詰まっていると遂に地面が見えてきた。受け身をとる準備をしていると、
「おいっ!アホっ!余計な事すんなっ!!」
「…!?」
「………っ!」
「……セーフ…。」
信じられないが、あのエイデン君にふわっとキャッチされた。冒頭助けないと豪語していたあのエイデン君が、だ。
こんなに近くでエイデン君を見たことはなかったが、やはり整っており王子様の様な顔をしている。その顔が、…イヤ、正確にはその顔の整った柳眉がぐっと皺を作る。
「…………は?」
「え?…わっ!?」
そしてお姫様抱っこの状態から脇に手をツッコまれ今度は高い高いの状態だ。ぶらぶらと脚が揺れる。
「エ…、エイデン君…?」
「………重力操作してる?」
そして意味の分からない質問をしてきた。
さっきできないと言ったばかりではないか。いつものようにバカにしているのかと思ったが、本気で訳が分からないといった表情をしているエイデン君にその考えは否定された。
「……してないけど…。」
「………いや…、お前、…内臓詰まってんの?綿みたいに軽いんだけど。」
「…はい?」




