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「わ~。ここがパパたちの学校?」
「古めかしい学校だろう?300年の歴史があるんだ。」
「ただ古いだけだろ。」
そろそろ学校へと戻らなければならなかったため、餓鬼の要望通り一緒に連れてきたのだが、一応俺の子だと言っていた癖にパトリックはクリフに懐き、現在クリフに抱っこされている状態だ。俺の子なんだろうが、俺の。
「さ、教室に着いたよ。とりあえず先生が来るのを一緒に待とう。」
「うん。」
「誰に似たのかすごく素直で可愛いね。ママに似たのかな?」
「っ!」
そうだ。餓鬼が居るということは将来結婚してパートナーが居るということだ。……いや…、マジで婚外子とかだったらシャレにならんが、未来の俺はそこまでクズ野郎ではないことを信じたい。…あ、でもこいつシメオンつったな。じゃぁ、ちゃんと結婚して出来た子か…。
(…俺の、…嫁…?)
ふとソフィアの顔が思い浮かび頭を振る。
(馬鹿か俺!何考えてんだっ!でも…――。)
「ただいま。」
「戻ったよ~。二人とも怪我はしてない?」
背後から明るい声が響き振りかえる。俺の目を奪う桃色の髪。いつもニコニコと笑顔を浮かべる――
「あ、マm――、」
俺は慌ててパトリックの口を塞いだ。
「ん?誰この子?」
「エイデンの…、親戚の子?」
「あ、いや…、」
「エイデンの実子だって。」
「クリフお前マジ黙っとけ!ぶっ殺すぞ!」
ほんと、コイツの事今後一切相棒だなんて言わねぇ!
◇
「…で?マジで言ってる?」
「…?」
「いや、ほら…、」
「ソフィアがママなのかってことでしょ?」
「そうっ!それ!」
俺はパトリックを教室から連れ出すと実験室まで移動した。クリフは「面白そうだから俺も行くよ。」とか言って勝手についてきた。いらん!来んなし!面白がってるだけだろっ!
性格が糞なクリフの事はさておき、先ほどパトリックはソフィアを指さしてママだと言いかけたのだ。それが本当ならば…――
「そうだよ。ソフィア・デュ・シメオンがぼくのママ。」
「…っ!」
パトリックの発言を聞き、俺は思わずコロンビアポーズを決めてしまった。嬉しい。嬉しすぎる。嬉しくない訳がない。俺が、ソフィアと…?…で、パトリックは、俺とソフィアの子どもだと…?
「マジ大事にする。何か欲しいものは?お腹すいてない?」
「態度の変え方エグ。ウケる。」
パトリックの両手を握り目線を合わせる。確かに全体的には俺のミニマムサイズだけど、柔らかそうな瞳とかはソフィアに似て無くも無くも無い。
「……何でもいいの?」
「おう‼お前も知ってるだろうけどシメオン家は金持ちだから、出来ないことも買えないモノもなんもねぇ!」
「一応、そういう発言は他所では控えなよ。」
「お前もいいとこの坊ちゃんなんだから同じようなもんだろうが。」
「シメオン家と一緒にしないでくれよ。」
再びやれやれと両手を上げ、大げさにポージングをするクリフを無視してパトリックの返事を待つ。
「…………じゃあ、パパと、ママと、…一緒にデザート食べたい…。」
ようやく口を開いたパトリックが告げた願いは、何とも可愛らしいものだった。
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