エピローグ
「パトリック?」
「…っ!?…パ、…パパ…。」
「どうした?そんなとこで?」
「パパッ…!」
「ははっ。随分と甘えん坊だな。もしかして、丁度今帰ってきたか?」
「…っ!?」
外はすでに帳が下り、望月の明るい夜空に星々が負けずと煌めいている。
家の中はもちろん外からの光ではなくランプの暖かな明かりが灯っており、その様な時間帯のシメオン邸に父親がいることにパトリックは違和感と期待を抱きつつ、エイデンからの抱擁を喜んで受け入れた。
「その様子じゃ、『俺』が今送り届けたみたいだな。」
「パパっ…!」
「お帰り、パトリック。」
「…っ!」
父親から受けた額のキスに喜ぶも、やはり逸る気持ちが抑えられない。パトリックはママは、と辺りを見渡した?
「あら?二人ともここに居たの?」
「ママっ!!」
するとタイミングを見計らったように廊下へ顔を出したのは、馴染みがあるも久しぶりに見る大好きな母親の姿。パトリックはその小さなコンパスで廊下を駆け、思いきりソフィアに抱き着いた。――パパだ。ママだ。とパトリックは心の中で反芻する。
「あらあら。どうやらエイデンの言うとおりね。」
「だろ?俺ってばマジで天才だから。」
「ふふっ。そうね。歴代最高魔導士様。」
「もっと言ってもいいんだぜ?」
「え~、止めとく…。」
「なんでだよ。」
「ふふふっ、冗談だよ。流石エイデン。」
「…おう。」
「…っ!パパ、ママ…、仲良し?」
「「おう(うん)。パトリックのおかげでな(ね)。」」
「…っ!」
エイデンとソフィア、二人に抱きしめられ、その温かさと二人の纏う柔らかな空気にやっと変化を頭と心で理解したパトリックの瞳から涙が零れた。
「あらあら。泣かないで?」
「俺に似たイケメンが台無しだぞ?」
「…へへへっ。」
パトリックは涙を流しながら笑顔が溢れた。胸が暖かくて涙が止まらなくて、でも口角が緩むのも抑えられなくて――
「さあ、晩御飯にしましょう?今日はママが作ったの。」
「ソフィアのご飯は美味しいからな。」
「ママのご飯!?」
「うん。オムライス作ったの。」
「…っ!…うん…。パパとママとたべたかった…っ!」
「…待たせてごめんね?」
「一緒に行こう。」
エイデンとソフィア、二人と手をつないで歩く幼い魔導士。
その心は大いに満たされ、その感情が表情にも現れていた。
パトリックは幸せという感情を自覚する。この達成感と満たされた感覚は何時になっても忘れることは無いだろう。ふと、先ほどまで共に協力していた幼い父親のことを思い出す。やや寂しい気持ちも感じつつ、彼にとって最後になる任務を遂行する。
「…パパ、パパがいつも素直でいろって!」
きっと、この初夏の柔らかな風の様な満ちて沸き上がるような感情は一生忘れない。




